第三幕その三
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「今ここにいると」
「はい。その通りです」
伯爵にそう答えた。
「では赤子を生きたまま焼いたのはこいつか」
「はい」
「私の弟を殺したのも」
「その通りです」
フェルランドは沈痛な声でそう答えた。
「全てはこの女が為したことであります」
「嘘をお言いでないよ」
だがアズチェーナはここでこう反論した。
「言うに及んで何を言うんだい、この嘘つきが」
「私が嘘を言うだと」
しかしフェルランドはそれに対してすぐに言い返した。
「騎士の名にかけて戯れ言なぞは言わぬ」
「そうだな」
伯爵は彼の言葉を認めた。
「そなたが嘘を言ったことはない。それは認めよう」
「有り難き幸せ」
「ということは女よ」
そう言いながらアズチェーナに顔を向ける。
「御前が嘘をついているということになる」
「クッ」
「そして御前は私の弟を攫い殺した忌まわしき悪魔だ。今その天罰を受ける時が来たのだ」
「そうするつもりだい」
ここまで来てしらを切るつもりはなかった。ふてぶてしい態度でそう返した。
「締めよ」
伯爵は兵士達にそう命じた。すると兵士達はアズチェーナの縄をさらに強く締めた。
「あああっ!」
それを受けて苦悶の声をあげる。
「何てことをするんだい!」
彼女は叫んだ。
「これが人間のすることなのかい!」
「その言葉そのまま貴様に返そう」
伯爵は怒りに満ちた声でそれに応えた。
「我が弟の恨み、今こそ晴らしてくれる」
「フン、どうやらあんたはあの親父よりもずっと酷い奴のようだね」
「何とでも言え」
しかし伯爵の怒りは収まらなかった。
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