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SAO編−白百合の刃−
SAO33-雪は解けて雫となる
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「これが私……駄目でどうしようもないでしょ?」
「はいはい、そんなこと言わないの。大事なのはこれからなの」

 私が自分を責めることを予想していたようで、悩まずにキリカは即答して頭を撫でてくる。
 温かい……手を頭に乗せて左右に動かすだけなのに、心地よい……安心する。

「……ねぇ、キリカ」
「ん?」
「私を必要としてくれるのは……とても嬉しい」
「うん」
「貴女の手に触れて、私は救われた」
「それはお互いさまかな……私も、ドウセツに会わなければ、後悔の念にいつまでもとりついていたから」

 あの時のキリカ、『白の死神』とも呼ばれている彼女は――――私と似ていた。
 恐怖に怯えて助けての一言がいえない、施設にいた時と同じように、その時の私も助けての一言が言えないくらいに――――怯えていた。
 違っていたのは、私と違ってキリカは行動していたこと、怯えながら人のためだと思って、前に行動していた。でも前に進む道は、とてもじゃないが崩壊へと招く道を歩き出していた。

「だから、本当は貴女と一緒に前線へ戻るべきなんだけど……」
「いいよ」
「え……」

 見上げると彼女は笑顔だった。ひとつも嫌な顔せずに言ってくれた。

「まだ、戻るのは怖いんでしょ? だったら手伝うよ」

 ……敵わない。

「それに、そんなに無理に頑張る必要もないしね」

 とてもじゃないが、適わない。
 貴女の優しさには、どんなに強く偽装しても、いくら手を振り払おうと、否定しようとしても…………敵わない。
 それと同時に、私が一番欲しがっているもの。
 
「キリカ……ごめんなさい」
「そうやって、泣く時は我慢しなくて泣いてもいいんだから」

 ごめんなさい。
 まだ、貴女に言えないことがあるけど、それは……私がその人に言わなければいけないことだから、まだ貴女に言えない。

 そんな自分を優しくしてくれて。

「――――ありがとう」
「……うん」

 返事をすると、もう一度頭を撫でてくれた。少々恥ずかしいけど、受け入れたいものだから拒む必要はない。
 怖くなっても大丈夫。支えてくれる人がいるから。
 
 結弦さん。
 貴女のプレゼントは、萱場晶彦によって最悪なものにしてしまったけど、おかげで大切な人ができました。
 ありがとうございます、結弦さん。

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