第3話『壊れる日々』
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いる。
ここはココヤシ村じゃない。俺の生まれ故郷だ。
「……けて……けて」
足元、母さんと父さんがいた。痛そうに呻いてる。
「お父さん! お母さん!」
駆け寄ったところで、異変。
二人に足を掴まれた。
「!?」
凄い握力だ。正直、痛い。
「……なんで、見捨てた」
「どうして私達を見捨てたの」
「……え?」
いま、何を言われた?
「俺達を見捨てて、一人だけ幸せになって」
「ち、ちが――」
見捨てるつもりなんてなかった。
ただもうお父さんもお母さんも動いてくれなかったから。
言おうとしてるのに、口が動かない。
まるで自分の口じゃないようだ。
「守るんだ」
「守って」
「え?」
景色が一変した。
天国?
そう思ってしまうほどに優しい場所だった。
一面に広がる花畑。
頬を撫でる風が甘い香りを運んで鼻をくすぶらせる。
いつの間にか足の痛みがない。
両親がいない。
と思ったら目の前で仲良く立っていた。
お父さんが言う。
「大切なものを」
お母さんが言う。
「守りたいもの」
二人が口をそろえて、言う。
「守りなさい」
きっと二人は俺のことを心配してくれている。
そんな気がして、反射的に答えていた。
「守る、守るよ……もう2度と大切なものは失わない、死んでも守る」
二人が悲しそうに頷いて、でも笑ってくれた。
「そうか」
「がんばってね」
「ベルメール! ベルメール!」
「っ」
家の外から聞えるゲンさんの声で目が覚めた。
模擬訓練やってて……あぁ、ベルメールさんの一撃ではじかれた俺の木刀が丁度額に直撃したのか。
起き上がると頭がずきりと痛んだ。
これはたんこぶが出来てそうだ。
「……」
夢を見ていた気がする。よくわからない夢だ。まぁ、所詮は夢だし、あまり気にしても仕方ない。
「気を失ったのは……久しぶりだなぁ」
しかし、最近ベルメールさんの手加減がなくなってきたんじゃないだろうか。
それだけ俺が成長してきたということなのかそれとも……いや、そう考えておこう。単なる意地悪とかだったらさすがにいやだ。
ふと窓から差し込む光に目を細める。
「……西日?」
昼はとっくに過ぎてしまったということだろう。
あぁ、昼ごはん食べてないや。
なんとなく損をした気分だ。
とりあえずキッチンに行こう。なにか置いてくれてるはずだ。
そう思って扉を開けようとしたとき「ベルメールさん、ごめんなさい。どうしてもこの本欲しかったの!」
笑顔で本を抱えるナミが扉の隙間からみえた。
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