第3話『壊れる日々』
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「……ハント?」
「あ、ああ……でもそれは確かに楽しそうだな! ……ナミはどういうのがいいんだ?」
慌ててパンフレットのページをめくる。ナミは一瞬だけ怪訝な表情をみせるも、すぐにどうでもいいことだと割り切ったのか、パンフレットをめくり、指で示す。
「これ!」
さしたのはまさかのトップページにのるソレ。億越えの船だ。
「……ごめんなさい」
さすがにソレは無理だと反射的に頭を下げる。ナミが「え〜」とつまらなさそうに言うが、さすがに無理なものは無理だ。だがそれでは気がすまなかったのか、ナミは考えるように空を見つめて、手をポンと打った。
「体の臓器ってさ……結構お金になるんだよ?」
「売れってか! 売れってか!? こわいことをさらりと言うんじゃない!」
「だめ?」
「可愛く言ってもだめだ!」
実に楽しそうに二人は笑う。
いつか二人で旅に出るというそれを夢見て。
いや、それは夢ではない。
そう遠くない将来の決まった未来なのだ。
幸せな今と、興奮に溢れる未来。
彼らは笑う、実に笑う。
楽しそうに、幸せそうに。
彼らの笑い声はいつまでも埠頭に響いていた。
翌朝。
いつもと同じだ。
何の変哲もない朝。だけど、だからこそ気持ちのいい朝。
「やっ!」
「甘い!」
上段に振りかぶった木刀が空ぶった。声の方向を振り向けばもう目前に木刀が迫ってきている。どうにか一歩引いてそれを避けた。昔はこういう顔面に攻撃が迫ってきた時は目を閉じてしまっていたものだけど、そういう反射行動も今はなくなった。
ベルメールさんの木刀を回避したはいいけど、まだベルメールさんの攻撃は終わっていない。
空振りのあと、そこからの追撃。
こんどは腹を狙った横ぶり。木刀を立てて、それにあわせる。
どうにか防いだけど、体重の乗ったそれを堪えきれずに弾き飛ばされた。慌てて体勢を立て直そうとして木刀が手元にないことに気付いた。
「……あれ?」
ベルメールさんが慌てたように上を差して、つられて顔を上に――
木刀が顔面にまで迫っていた。
「――あ」
ベルメールさんと声が重なった気がした。
暗い、暗い世界。
いや、暗いだけじゃない。
赤い世界でもあった。
人の気配はない。
それどころか命の気配もない。
誰もいないのだろうか。
不思議に思って、あたりを見回すけど誰もいない。
あるのは赤いなにかと黒いなにか。
「……?」
まった。
この世界に見覚えがある。
あれはいつだった?
「っ!?」
急に背後から熱を感じた。慌てて振り返った先のそれを見て、思い出した。
家が燃えて
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