第二幕その六
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爵」
フェルランドが彼を制した。前に出る。
「どうした」
「ここは引きましょう。神の御前です故」
「馬鹿を言え」
だが伯爵は取り合おうとしなかった。
「今ここでこの不埒な男を成敗するのだ。その神の御前でな」
「それはわかっております。しかし」
「しかし・・・・・・何だ?」
「見たところ兵はまだいるようです。何やら気配を感じます」
「何っ」
伯爵はそれに驚いて辺りを見回した。すると闇の中に何かが蠢いて見えた。
「まさか」
「有り得ます。もしそうだとすると今ここで戦えば我等は皆殺しに遭います」
その危惧は当たった。彼等の右に新手が姿を現わした。
「マンリーコ、無事か!?」
黒い髪と目をした小柄な男が姿を現わした。青い服に黒いマントを羽織っている。
「ルイス」
マンリーコは彼の名を呼んだ。
「来てくれたのか」
「ああ。山を降りたと聞いてな。もしやと思いここに来たが」
彼はマンリーコ達の側にまで降りてきてそう言った。その後ろには手勢がいる。
「当たりだったようだな。まさか敵さんがいたとは」
そして伯爵達に目をやった。
「ああ。だがここは私の手勢だけで充分だ」
「いや、そういうわけにもいかない」
助太刀を断ろうとするマンリーコに対してそう言った。
「あんたは病み上がりだ。そんな状況で戦ったら危険だ」
「しかし」
「まあここは任せてくれよ。いいな」
「・・・・・・わかった」
マンリーコは渋々ながらそれに従った。ルイスとその手勢はマンリーコの手勢と共に伯爵達を取り囲んだ。
「さて、これで形勢は変わったわけだが」
ルイスは伯爵達を見据えて言った。
「どうする?、剣を収めるならよし。しかしまだ抜いているというのなら」
彼はそう言いながら剣で伯爵を指し示した。
「わかっているな。さあ、どうするんだい?」
「クッ・・・・・・」
伯爵は顔を紅潮させていた。そしてその手に持つ剣を振り上げようとする。だがフェルランドはそれを止めた。
「伯爵、多勢に無勢です」
「しかし」
「機会はまたあります。ここは剣を収めましょう」
「だがここで引けば」
「少なくとも命は保てます。生きていれば必ず好機が訪れますから」
「クッ・・・・・・」
彼も分別がないわけではない。嫌々ながらもそれに従うことにした。
「わかった。ここはそなたの言葉に従おう」
「はい」
伯爵は剣を下ろした。そしてそれを腰に収めた。
「これでよいな」
「いかにも」
フェルランドではなくルイスがそれに答えた。
「ではレオノーラ、貴女は」
「はい」
彼女はそれに頷いた。そしてマンリーコの側に寄る。
「ようやく貴方の許に入ることができましたね」
「ええ」
マンリーコは彼女を抱き締めてそれに答えた
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