第十話
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ドリアス伯爵とセルフィナさんを交えた昼食会は、時に政治的な話題にも及ぶことがある。
「……それだけ南トラキアの民衆は苦しい生活を強いられているのですね」
セルフィナさんがドリアス伯爵と交えていた会話は一般の民衆の暮らし向きの話で、彼女は辺民街区での一件以来そのあたりに心が行っているようだ。彼女にとっては辺民街区の暮らし向きでさえ気の毒に思う中、それよりも劣悪な環境の南トラキアの民衆のことを慮っている。
「そうですね、わが国ではその日一日の仕事を得られれば一家の2,3日の食事の心配は無いくらいの生活がなんとかできる。職にあぶれても3日に1回くらいは教会をはじめいろんな機関の受け回りでの施しもあるので王都に住まえばなんとか生き延びることは出来ますしね」
「それだけ我が国の生産力が高いということですな。だからこそ、あの餓狼どもは執拗に我らから隙を見ては奪おうと目を光らせている」
俺が口を挟んだ後は伯爵がそう応えた。
「彼らが軍を養う力をもうすこし抑えて、もっと地域の特性に合わせた生産活動に専念して交易で暮らし向きを改善しようとは何故思わないのでしょう? 」
「力を失えばたちまち我らに征服されると強迫観念に捕らわれているのでしょう。それに、彼らとは交易をしてはならぬとグランベルを交えての条約がありますしな」
再びの俺の言葉に対する伯爵の応えがそうだった。
「……仮に交易を行えるように条約が改定されたとしても、軍事力の裏付けが無ければ不平等な交換レートでの取引を強要される恐れがあるという考えに彼の国の指導者達は至るかも知れませんし」
「ならば、ターラやペルルークなどの自由都市を経由して建前上は絶縁しつつも、それらの中間者の力を借りて協力し合うとか……いや、わたしでさえ思うくらいなら既にそういう動きはあったんでしょうね」
セルフィナさんの言葉のあとに俺はう〜んと唸って悩む。
「いずれにせよ我らが救いの手を差し伸べようとしても彼奴らめはその手を払いのける。他国の民よりまずは自国の民、できるだけこちらの犠牲を減らすにはこのまま彼奴らを日干しにしてしまう他無いというのが4国での国是だからの」
この話題はここで打ちきるぞ。ということを表すカルフ王の言葉であった。
「わたしが伝え聞いた話だけでは彼の国の実情はわかりません、教えてくれた人物の恣意も入っているでしょう、もしお時間が許されるのでしたら何か教えてはいただけはしませんでしょうか? 」
「彼の土地は地味薄く、小麦の取れる場所は非常に限られておりますな。 また、盛んに活動している山が少なくは無く、地が鳴動することがままあるとか」
俺の質問に答えてくれた伯爵の言葉に興味深げに相槌をうつと
「彼の国には度々疫病が流行りおる。あのときミー
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