第2話『夢を描いて』
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散るので誰かに来て欲しいと思ったことはなかったし、ノジコやナミにも何度もいってきた。もしもこれが森の中や山中だったなら危険が迫る可能性もあるので、叱っていたかもしれないが、釣りに関してはまだ初めて間もないこともあって釣れないことのほうが多いし、なによりも危険が迫ることなどほぼない。
――ま、いいか……というか何か用か?
「っ」
ナミに視線を送り、息を呑んだ。
風にたなびくオレンジの髪が夕陽の光を吸収して反射する。夕陽を受けて埠頭を歩くナミの姿が、まるで彼よりも年下のものとは思えないほどに輝いていたからだ。
目をごしごしとこする。
――な、ナミなのか?
今自分は一体何をみているというのだろう。
何度目をこすっても瞬きしてみても、ナミが近づいてくる様子に変わりはない。
「……な、ナミか?」
思わず声に出していた。
「え、当たり前じゃん……どうしたの?」
不思議そうに首を傾げたナミは当然ナミでしかなく。わけもわからずにハントはホッと胸を撫で下ろした。
「どうしたの? はこっちの台詞だろ?」
「あ、うん」
ナミが立ったまま、見下ろす形でハントと目を合わせる。本来の身長はさすがにハントのほうが高いのだが、埠頭に腰掛けているハントと普通にたっているナミとではこうなるのは当たり前だ。
――なんだ?
首を傾げる。
顔色は夕陽がのせいで見えないのだが、表情だけみれば困っているように見える。なぜかモジモジとしているナミの姿。それになにかこみあげそうになる自身の感情を制して、ハントは言う。
「ノジコと喧嘩でもしたか?」
「ううん」
「違うのか」
「うん」
「じゃあどうしたんだ?」
「……うん」
やはりおかしい。
いつものナミなら言いたいことは真っ直ぐに言ってくる。こんなのはまるで本屋にあった漫画に出てくる美少女が男に告白するときの所作だ。
そこまで考えて、ハントは首を傾げる。
目の前のナミを見つめて、そして内心で笑う。
――ありえない。
たしかにナミは可愛い。そう思ってはいるが、ナミの場合モジモジどころか脅迫とかしながら告白しそうだ。いや殴り飛ばしながらかもしれない。
と、失礼なことをそこまで考えて、首を横に振った。
「ま、とりあえず座ったら?」
「あ、うん」
「さっきからうんばっかりだな」
「……うん」
これでは会話にならない。
さすがに何年も一緒に生活してきた義兄のようなハントとしても、そこまで無言でいられると不気味に感じてしまう。
――もういっそ、待ってみようかな。
「……」
「……」
――そうしよう。
ただ釣竿に集中する。
もしかしたらこの待
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