第1話『狩人』
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ぅ! 新記録じゃないか!?」
「そうなんだ!」
「やったじゃないか」
自分の如く喜んでくれるゲンゾウに、ハントも無邪気に笑う。
「さて、これから家に帰るのならナミを連れて行ってくれ。お前と一緒なら悪さもせんだろ」
「わかった、任せてゲンさん」
ナミを地面に降ろしたゲンゾウがナミへと「悪さはあんまりするんじゃないぞ」と言い残して
「しっかりとベルメールに言うんだぞ」とハントへ言い残して去っていく。
「さて、じゃあ帰ろうか」
「……うん」
ゲンゾウから解放されてご機嫌なナミ……と思っていたがそうでもなかった。
「どうした? なんか元気ないぞ?」
「……」
ナミが黙り込む。
ほんの僅かな沈黙のあと「ごめんなさい」ナミが殊勝な顔で謝罪した。
――雨? いや、雪? いやいや雹が降るんじゃないか?
「ど、どうしたんだ!?」
平静を装って、視線を空に送るも空は快適。今日も晴れ渡っていて崩れそうにない。ハントが内心で焦りに焦る中、ナミはやはり暗い表情で言う。
「本を買うお金なんかないのに……私いつも迷惑をかけて。航海術で世界中の海を渡って世界の海図を地図に起こすっていう夢……やっぱり諦めたほうがいい?」
上目遣いで尋ねるナミ。
それが本気の目で、よく見れば目が潤んでいる。
いきなりの問いに、少し鼻白んでしまったハントだったが、すぐに微笑んで首を横に振った。
「いいんだよ、お前は」
「いいって……なにが?」
「ベルメールさんはお前の夢を楽しみだって言ってたろ?」
「うん」
「俺にもノジコにも夢はない……だから俺たちだって応援しているんだぞ? お前が夢をかなえるところを、夢に向かって勉強している姿を。というか寧ろそれが俺たちやベルメールさんの夢でもあるんだ……だから、さ」
ハントがそっとナミの頭に手を置く。
「だから、諦めるなんて悲しいこと言うな。お前は俺達の夢を背負ってるんだから……な?」
顔はソッポを向けて、耳まで真っ赤にして。ハントなりに照れを隠そうと必死なのだ。ただナミが本気で悩んでいるからこそ自分もそれに本気で答えてやらないといけない。元気付けなければならない。
いうなればハントという子供なりの気遣い。
それに気付いたから、ナミは言う。
「ハント、風邪?」
「んなわけないだろっ!? 俺なりにいい話してたのに腰を折るんじゃない!」
「まったく」と大股でナミよりも先に行ってしまうハントの背中に、ナミが微笑み、小さく頷く。
「ありがとう」
その声は小さく、村の雑踏にかき消されてハントの耳には届かなかった。
「ほら、行くぞナミ!」
「うん!」
まだ8歳と6歳とは思えないほどに、それは大人びた背
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