暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
プロローグ
[3/3]

[9] 最初 [1]後書き [2]次話
動かないと!」

 二人を引っ張るけど、動いてはくれない。
 いや、父さんが動いた。

「逃げ……まも……生き」

 なにをいったのかほとんどわからない……だけどそれっきり父さんはまた動かなくなってしまった。
 何が起こったのかわからない、だけど恐かった。
 何が起こっているのかわからない、だから泣けなかった。
 黒い煙に覆われてしまった空を見上げて、もう、そこから先は覚えていない。
 多分、煙にやられたんだろう。

「……あれ?」

 気付けば地面で寝ていた自分に首を傾げて、立ち上がったときには本当に全てが終わっていた。
 流れる赤い川。立ち上る黒煙。すすけた廃墟。動かない父さんに母さん。
 なんだろう、これは、夢だろうか。
 頬をつねってみた。

「……いたい」

 夢じゃない?

「おとうさん? おかあさん?」

 返事がない。
 なにもない。
 誰もいない。

「え……え?」

 訳がわからなくて、意味がわからなくて人を探す。
 頬を流れそうになる雫をどうにか拭いながら、走る。
 なんだよ、これ。
 なんなんだよ、これ。
 さっきまで笑っていた母さんはどこだろう。
 いつものように面白い父さんはどこにいるんだろう。
 考えれば考えるほどに、なにかがこみ上げてくる。

「そういえば、ノジコは? ……ナミは? それにみんなは?」

 走ろうとして「キャハハハ」
 聞えた。
 これは多分ナミの笑い声だ。
 無邪気で暖かい笑い声。
 ホッとして、つられるように笑い出しそうになって声のした方へと顔を出した。
 そこにはナミとそれを抱えるノジコ、それにボロボロの海兵さんがいた。 

「妹?」
「ううん」
「笑ってる、人の気も知らないでさ」
「キャハハ」
「えはは」

 海兵さんノジコも笑いながら泣いている。
 ナミの笑い声が響いて、俺の耳にも届いて。なぜだろう、俺も笑っていた。

「ハハハ」


 こぼれる雫が止まらない。海兵さんたちが驚いたように俺のほうに目を送ったけど、人の目なんかを気にしていられなかった。
 ただ、ナミの笑い声が胸に響いて。

「ハハハっ」

 涙を止められそうになかった。




「あんたたち、私と一緒にきなさい」

 それがベルメールさんと俺たちの出会い。


[9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ