プロローグ
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動かないと!」
二人を引っ張るけど、動いてはくれない。
いや、父さんが動いた。
「逃げ……まも……生き」
なにをいったのかほとんどわからない……だけどそれっきり父さんはまた動かなくなってしまった。
何が起こったのかわからない、だけど恐かった。
何が起こっているのかわからない、だから泣けなかった。
黒い煙に覆われてしまった空を見上げて、もう、そこから先は覚えていない。
多分、煙にやられたんだろう。
「……あれ?」
気付けば地面で寝ていた自分に首を傾げて、立ち上がったときには本当に全てが終わっていた。
流れる赤い川。立ち上る黒煙。すすけた廃墟。動かない父さんに母さん。
なんだろう、これは、夢だろうか。
頬をつねってみた。
「……いたい」
夢じゃない?
「おとうさん? おかあさん?」
返事がない。
なにもない。
誰もいない。
「え……え?」
訳がわからなくて、意味がわからなくて人を探す。
頬を流れそうになる雫をどうにか拭いながら、走る。
なんだよ、これ。
なんなんだよ、これ。
さっきまで笑っていた母さんはどこだろう。
いつものように面白い父さんはどこにいるんだろう。
考えれば考えるほどに、なにかがこみ上げてくる。
「そういえば、ノジコは? ……ナミは? それにみんなは?」
走ろうとして「キャハハハ」
聞えた。
これは多分ナミの笑い声だ。
無邪気で暖かい笑い声。
ホッとして、つられるように笑い出しそうになって声のした方へと顔を出した。
そこにはナミとそれを抱えるノジコ、それにボロボロの海兵さんがいた。
「妹?」
「ううん」
「笑ってる、人の気も知らないでさ」
「キャハハ」
「えはは」
海兵さんノジコも笑いながら泣いている。
ナミの笑い声が響いて、俺の耳にも届いて。なぜだろう、俺も笑っていた。
「ハハハ」
こぼれる雫が止まらない。海兵さんたちが驚いたように俺のほうに目を送ったけど、人の目なんかを気にしていられなかった。
ただ、ナミの笑い声が胸に響いて。
「ハハハっ」
涙を止められそうになかった。
「あんたたち、私と一緒にきなさい」
それがベルメールさんと俺たちの出会い。
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