プロローグ
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にひっかかるなんて……ハントのお父さんがきいたらないちゃうんじゃない?」
ハントの父はこの近辺では一番の狩人として名高い。様々な獲物を様々な手法で毎日のように持ち帰る。ハントもそういう父をもって誇らしい気持ちがあるらしく、ほんの少しだけ恥ずかしそうにするが、すぐに元気に言い返す。
「うるさいな、かりはお父さんにいつかならうから、それまでのことだい!」
「じゃああたしはもっとずるいことをかんがないと」
「ふん、つぎはおれがかつけどな!」
「ハイハイ……それよりもナミのとこ行こうよ」
「お、行く行く!」
「こないだあたしの手にぎってくれたんだから!」
「え、うそ、おれまだだ!」
「へへーん」
「むうう」
楽しそうに駆けるノジコの後姿を、ハントが追う。
まるで先ほどまでの喧嘩の姿は二人の仮の姿ではないかと思えるほどに仲の良い姿だ。大人たちはこれを知っているからこそ二人の喧嘩を止めないのかもしれない。
――これが、ずっと続くと思ってた。
未だに思い出す。
楽しかった俺の記憶だ。
そう、俺が唯一覚えているあの頃の楽しかった記憶だった。
のどかな場所だった。
どう、と聞かれてもよくわからない、というかあまり覚えていない。
そう思うにはまだは子供過ぎたから。
でも、あれは確かにのどかった。
青い空、白い雲、心地よく吹き抜ける潮風。
生い茂る木々、咲き誇る花々、一面に広がる緑畑。
面白い父さん、優しい母さんと毎日を過ごし、近所の友人たちと日が暮れるまで遊ぶ。
のどかで、何よりも幸せだった。
いつものようにおぼろげに父さんを見送って、いつものように昼ごはんを食べて、いつものようにウトウトして。
いつしか俺も父さんのように森とか海に行って自然の幸とかを取れるようになるんだろうかとか漠然と思いながら。
ノジコに負けないようになりたいなとか、ナミってそういえば性別どっちなんだろうかとか思いながら
だけど、ある日、それは突然瓦解した。
地が震えるほどの爆音。
耳をつんざく誰かの悲鳴。
母さんに手を握られて外を出る。突如、母さんが倒れた。胸から血が溢れている。ピクリとも動かない。
父さんが泡を喰ったように帰ってきた。俺を抱きしめて、また父さんも動かなくなった。背中から血が漏れていた。
「え?」
訳がわからなくてぼけっとしていると今度は家が燃え出した。
熱い。
熱かった。
早くこの場所から出て行きたかったけど、父さんと母さんが動いてくれなかったから、俺も動けずにいた。
放っておけば父さんと母さんまでも燃えてしまうんじゃないだろうかって、考えたんだろう。
「おとうさん、おかあさんも。はやくここから
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