第一部
阿修羅との戦い V
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「残念だったな。時間切れだ。」
事態は最悪の状況へと変化していた。
「ぐ、ア・・・グ!」
時間切れ。そう、時間切れだった。沙穂は、多少の被害を受けてでも、早期にラーフを倒すべきであった。
今彼女は、何の攻撃もされていない状態にも関わらず、悶え苦しんでいた。頭を抑え、激痛に耐えていた。今までの攻防でも一切流さなかった汗を大量に流し、痛みに慣れている筈なのに悲鳴を漏らす。そんな彼女の状況を、歯を食いしばりながら鈴蘭は見つめていた。
「た、助けないとダメなんじゃ!?」
「・・・ううん。まだ。まだだよ。まだ沙穂ちゃんは諦めていない。」
「でも・・・!?」
アリスの言葉に頷きもせず、ただ彼女の戦いを見つめている鈴蘭。彼女の耳には、ドクター謹製の、神の攻撃にも耐えられる超小型トランシーバーにより、沙穂からの通信が届いていた。
『まだ・・・やれるでありますよ・・・。手出しは、無用であります・・・。』
彼女の瞳からは、『諦め』や『絶望』などといった感情は微塵も感じられなかった。感じられるのは『闘志』。彼女は、この状況に陥ってもまだ勝ちを諦めていなかった。激痛と戦いながら、それでも勝利しか見つめていない。
(・・・大丈夫だよね、先輩・・・)
沙穂の決意を見た彼女は、静かに戦闘を視続けている翔希に視線を向ける。彼の強く握った掌からは、ボトボトと血が滴り落ちていた。元々熱くなりやすい男である。そうでもしないと、今すぐにでもあの戦闘に乱入しそうになるから、必死に我慢しているのであろう。彼は彼なりに、沙穂の意思を尊重しようとしている。
だが、未来を視る事が出来る彼が何も言わないということは、まだ彼女は命の危機にまで陥っていないということだ。
「なら・・・私が手を出すわけにはいかないよね。」
仲間を信じる。
自分と一緒に世界を救った仲間を信じる。
それが出来なくて、何が【聖魔王】だというのだ。
「信じてるよ・・・沙穂ちゃん。」
彼女の呟きは、アリスにも届いた。
☆☆☆
何故、沙穂がこんなにも劣勢に立たされているのか?
それは、ラーフの権能のせいである。
(まさか、リップルラップルさんの予想と全く違う権能だったなんて・・・)
沙穂の投擲作戦は上手くいかなかった。そもそも、アシュラとヴァルナの狙いは、時間稼ぎだったのだ。ラーフの権能さえ発動してしまえば、たった一人のカンピオーネなどどうとでも料理出来ると、そう確信していたからだ。・・・いや、沙穂だけではない。ラーフの権能を発動することの出来た今なら、例え此処にいる全てのカンピオーネと一度に戦っても勝てると信じていた。
些か卑怯な行いだと思われ
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