2話
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エリィ・マクダエルが両親の離婚を伝えられた時、あまりショックは受けなかった。
もちろんとても悲しかったが、子供ながらに薄々勘付いており予想された悲しみが現実となったもので取り乱したりすることはなかった。
元々聡い子供だったエリィは手が掛からずわがままも言わない子だったが、それでも頭の中は大混乱だった。
なぜかわからなかった。どうしてそうなってしまったのか。
離婚の気配を感じるようになったのは政治家だった父が失職してからだった。
マクダエル家はクロスベル自治州で有力な家柄で代々政治家を輩出する名家だった。
共和国人だった父が母と結婚して祖父の地盤を継承して議員になった。だから落選して一族の名誉を傷付けた、支持者の信頼を失ったと言われていろんな人に馬鹿にされたりするのが耐えらなかったのだと。
父は居辛くなったクロスベルを離れてもう一度やり直すために共和国に帰ると言い出した時に母と大喧嘩するのを何度か見たことがあった。
母はクロスベル育ちのお嬢様で旅行ならともかく生活を移すなんてことは考えられず、父がクロスベルと共和国とを行き来する生活を続けていたが、祖父の仲裁も空しく結局父はクロスベルに戻って来れず離婚である。
ご多分に漏れずどちらの親について行くか聞かれ、母と同じく生活の場がクロスベルにあったエリィは母といることを選択した。
しかしその母も一年も経たず帝国にいる親族を頼ってクロスベルを離れてしまった。
再婚の話が引っ切り無しに来た煩わしさとやはり父を愛していて思い出の残るクロスベルに居辛かったからだ。
エリィは最初母について行こうとも思った。しかしそれでは祖父が一人になってしまうと。
家業のことを考えて一人、祖父のところに残ろうと決断したのだ。
それはなぜ?という疑問符が頭に浮き続けていたから。
人に説明されて父と母が離婚してクロスベルから出て行った訳は理解しているつもりだった。
だけど自分がここにいると言っても引き止めることが出来ない、家族がバラバラになって行くこの状況がなんなのか全くわからなかった。
エリィは子供ながらになんとなく家業である政治に答えがあるのではないかと感じていた。
個人ではどうすることも出来ない家族の絆さえ断ち切ってしまう大きな流れであると感じ、その正体がなんなのかと疑問に思った。
家族をこんな目に合わせた根本的な原因を探すために常に触れている、そして触れてはいけないものについて彼女は学ぶために。
クロスベル自治州という故郷の事を。
それは七耀暦1194年、エリィ・マクダエル8歳のことである。
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