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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十二話 兵部省で交わす言葉は
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じゃないか、ん?」
 部長室から出てきた窪岡少将が馬堂中佐に声をかける。
「お久しぶりです、窪岡閣下」


同日 午前第十一刻 兵部省 陸軍局 軍務部 文書課
〈皇国〉陸軍中佐 馬堂豊久


 窪岡少将――前人務部長であり、現在は戦務課の長を勤めている駒州公子駒城保胤の友人である。
 ――だが、それだけで少将が勤めるポストの中でも重職を歴任出来るわけがない。
 彼は謀略活動こそ滅多に行わないが損得勘定の鋭さと視野の広さで危険を冒さず着実に成果を積み上げている。
「大隊の生き残り達の面倒をみようと思いましてね。中々思い通りにいきませんが、多少はマシにしますよ。」
 ――西田と杉谷、米山の三名と増強用に有望な下士官を数名引き抜く予定だし、新城も予想が当たれば猪口曹長を始めに可能な限りの人数を引き抜くだろう。奴は近衛に過剰な期待を寄せるような人間じゃない。あまり人は残らないだろう。後任の大隊長は苦労する事になるだろうな。だが、元々人材が足りない為、剣虎兵の独特に過ぎる戦い方を知り抜いた人材は貴重だ。
 ――後任を守原に決められる部隊に放り出す位ならば長期消耗戦を見込んで後方で教育に回す方がマシだ。
「何をやるのかは大体わかる。まぁ、間違いではない上に名分も立つ」
 窪岡少将が顎をさすりながら頷く。
「軍監本部(おれたち)よりも兵部省の管轄だが、実際、剣虎兵を前線で使ったら頭数が足りなくなる可能性が高い。人手が足らないからな、導術よりは幾らかマシだが」
 疲れた様にというか実際疲れているのだろう重い溜息をつく。
「後は保胤が貴様を頭に据えた例の大型連隊にも連れ込むのか?」

「はい、閣下。独立大隊でなくなった以上、剣虎兵隊の再編を行うので。その際に空いた枠へ詰め込む予定です。剣牙虎の扱いに熟達しているべき下士官と将校は必要ですからね。
兵の育成に関わりますから。」
 兵の教練は配属された隊で(基本的には連隊単位を最大として)行われる。
 銃兵はまだマシな方だが例えば砲兵では熟達した下士官と将校の指導の下でも新兵達を実戦に耐えうる部隊へと鍛え上げるには早くても一年は時間をかけなくてはならない。
 剣虎兵も、伏撃の際には剣牙虎を黙らせ。時には砲に怯えている剣牙虎を駆り立てるには剣牙虎の扱いに熟達していなければならない。その為、剣牙虎の主となる事が多い下士官、将校は専門的な教育を受ける必要がある。

「そちらには士官一人と下士官を何名かを連れて行くつもりです。俘虜生活を共にしましたが、幸いあまり恨まれなかったので」

「貴様も苦労したものだな。戻って来る事が出来ただけ幸運なのだろうが、それに年が明ければ大佐の芽もあるのだろう?」
 窪岡課長は苦笑いを浮かべていった。
「聯隊長としては臨時配置と言う事で、あくまで
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