暁 〜小説投稿サイト〜
シャンヴリルの黒猫
Chapter.1 邂逅
10話「襲撃」
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った。




口角が釣り上がる。



その瞳は、ひとりでに爛々と輝いた。





   まるで、獲物を狩る獣のように。





「やるのか? ならお前らも()られる覚悟を決めな。……人の恩人に手ぇ出した報い、受けてもらうぜ?」



 直後、



 ドッッ



 音を立てて“何か”がアシュレイから放たれた。



 それは威圧。  殺気。



 それは、覚悟。



 獲物を“狩る”ことを決めた強者の覚悟。



「……ひっ」

 誰かが喉に空気を送る。本当に恐ろしいモノを前にしたとき、ヒトは声を出すことすらかなわない。
 カタカタと、短剣が揺れる音がする。同時に、少しずつ、男たちとアシュレイの距離が離れていった。アシュレイはその場から1歩も動いていない。弱者の本能が、襲撃者達をアシュレイから遠ざけていた。

「……」

 ふと、あたりを制するその威圧が僅かに軽くなる。

「あ……う…うわぁああぁぁあぁああ!!!!」

 部下の1人が短剣を放って逃げ出した。本能の赴くまま、少しでも速く。少しでも遠くに。竦んで動かない足を無理やり回して、度々転びかけながら、必死に逃げていく。

 それが皮切りだった。

「うわあああああ!!!!」

「お、おい! お前ら!!」

 男たちが一斉に逃げ出していく。脳裏に浮かんだ“確実な死”を恐れた者たちが、我先にと街の中心へと駆け出した。そこには先程までの統率された動きの欠片もない。当然、頭の制止の呼び声も、彼らの頭を素通りするだけだった。

「……おやおや。残りはお前だけになったようだが…」

「くっ」

 頭の男が舌打ちをした。だが、それも苦し紛れというのはやった本人が最もよくわかっている。自分の力量が、アシュレイには遠く――足元にも及ばないということが。

 歯ぎしりしながら、絞り出すように頭は言った。

「…今回は引く」

 そのまま影のように掻き消える。

 威圧がふっと消え去った。くるりと後ろを向き、しゃがんで、無意識にほっと息を吐くユーゼリアに視線を合わせた。

「……大丈夫だった?」

「う…うん……」

 まだばくばくと音を立てる心臓に手を当て、肩で息をするユーゼリアをみやってアシュレイは立ち上がった。ユーゼリアの手を掴んで引き上げる。と同時に、

くうぅ...

「……ぷっ」

 小さく音を出した腹に、顔をこれ以上ないという程真っ赤にせながらアシュレイを睨むユーゼリア。全く怖くなく、単に上目遣いで可愛いだけなのだが、そこを本人はわかっては
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