第5章 契約
第55話 ハルケギニアの夏休み・昼
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「成るほど。その言葉から察すると、才人は零戦を飛ばせると言う事か」
名探偵と言う程ではないにしても、それなりの洞察力を発揮しての台詞で返す俺。しかし、零戦を飛ばせたり、肉体強化を行えたり。この世界の伝説の使い魔は、意外に便利な能力を持って居るみたいですね。
もっとも、誰かが飛ばせなければ、いくら珍しいからと言っても、こんなトコロにまで零戦を持ち帰りはしないでしょうから、才人が操縦出来るのも不思議では有りませんか。
寮塔から本塔を通り抜けると、直ぐに見えて来る火塔。そして、その元に存在する木造平屋の建物。某おとぎ話に登場するオオカミに一息で吹き飛ばされそうな掘っ建て小屋がコルベール先生の研究室兼居住スペースで有った。
いや、あの人は光頭人種に当たる人物ですから、掘っ建て小屋はあまりにも失礼ですか。
本塔と火塔の間に庵を結ぶ、と言う表現が先生には相応しいでしょう。
その掘っ立て小屋の粗末な木製の扉の前に立ち、
「コルベール先生。いらっしゃいますか?」
……と、中に向かって少し大きな声を掛ける俺。
タバサは普段通りに俺の右側に。そして、キュルケはタバサの後ろに立ち、タバサの部屋から持ち出して来た夏の必需品、団扇で自らの顔に涼風を送る。
何か、非常にやる気を感じさせない雰囲気ですが、彼女は、そもそも、コルベール先生のトコロに来る事についてもあまり乗り気では無かったので、この対応は仕方がない事ですか。
「やぁ、ミス・タバサにミス・ツェルプストー。それに、シノブくん。僕に何か御用ですか?」
時間帯が不味かったのか、かなり高い位置に達していた太陽光をモロに反射しながら、開いた扉の向こう側で眩しげ……訝しげに俺達の事を見つめるコルベール先生。
いや、正確に言うと、タバサとキュルケのトコロは普段通りに視線が通り過ぎ、俺のトコロ。俺の瞳を覗き込んだ瞬間に訝しげな。聞こうか、聞くまいか一瞬考えたような気を発した、と言う事です。
尚、流石に真夏の昼下がりに普段通りの黒のローブ姿では暑すぎるのか、夏向きの薄手のローブ姿では有りましたが。
俺は、手にしていた手提げ袋を、コルベール先生に指し示し、
「変わったお菓子を手に入れたので、食べてみませんか?」
……と、少し本題から外れた台詞を口にする。
但し、実のトコロ、台詞ほど気楽な雰囲気では有りませんでしたが。
このコルベール先生の研究室からそう強くはないのですが、人ならざる存在の放つ雰囲気が漂って来ていたのですから。
「そうなのですか。それは、嬉しいですね」
少し異臭を放つコルベール先生がそう答えた。これは、一週間ほどお風呂に入らなかったのか、それとも、彼の研究の
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