第5章 契約
第55話 ハルケギニアの夏休み・昼
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に駐機して有る零戦を横目にしながら本塔と火塔の間に有る本来の目的地。コルベール先生の研究室に向かう俺達三人。
尚、夏季休暇中の魔法学院に好き好んで居残っている生徒など殆んどいない為に、普段ならば、このアウストリ広場にも他の生徒が居て当然の時間帯なのですが、現在は一人も他の生徒達の姿を見つける事は出来ませんでした。
キュルケが帰省しない理由は……。口では、家に帰ると、縁談話ばかりでうんざりするのよ、などと言っていますが、おそらくは、タバサが実家に帰らないから、それに自らも合わせているのでしょう。
少なくとも、彼女は女性に対しては細かな気配りをするタイプの女性ですから。
男性相手は、基本的にからかう事の方が多いのですが……。
「そう言えば、ダーリンもこの竜の羽衣の事を知って居たけど、シノブもこれを動かせるって言うの?」
そんな、現在の状況からは少しずれた感想を頭の中で考えていた俺に対して、キュルケから興味津々と言った雰囲気の問いが投げ掛けられる。尚、この質問に対してはタバサの方からも、多少の興味有りと言う雰囲気が発せられました。
確かに、俺も才人と、おそらくは同じ世界出身だと説明した覚えは有りますが……。
「この零戦と言う戦闘機は、俺達の住む国で今から六十年以上前に造られた飛行機。せやから現代まで残っている機体は殆んどない。
そんな年代物の骨董品を飛ばせる人間は殆んど居なくて当然やろう?」
面倒なので、そう答えて置く俺。但し、ダンダリオンに知識を教わり、さまざまな技術を伝授する事を職能に持って居るハゲンチに操縦方法を教われば、零戦を飛ばす事ぐらいは簡単だとは思いますが。
ただ、この雰囲気だと操縦が出来る可能性が有ると言った途端に、キュルケに、それならば飛ばして見せろと言われる可能性が高い。そして、其処から先に、自らを乗せて飛ぶ事も要求されるでしょう。故に、操縦する事が出来ない、と言って置く方が楽ですからね。
まして、二人ともそれから先は、自らが操縦してみたいと言い出す可能性が非常に高いとも思いますから。
普通の人間ならば、そんな危険な事を考えたとしても、実際に行う可能性は非常に低いのですが、この二人は共に魔法使い。蒼穹を飛ぶ事に対する恐怖心は持っていないはずです。
まして、彼女らに取って非常に珍しいオモチャで有る事は間違い有りませんから。この、零式艦上戦闘機五十二型と言う機体は。
「やっぱり、ダーリンは特別だと言う事なのね」
キュルケの少しおどけたような台詞を口にする。本心から言っているのか、それとも、単に茶化しているだけか。
彼女の思考は表面だけから窺い知るのは少し難しいのでよく判りませんが、おそらくは、本心からの言葉ではないでしょう。
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