第一幕その六
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流石はホフマンさんだ。今まで三人の女性と深い交流があったのですか」
「聞きたいかい?」
「勿論です」
学生達は笑顔で応えた。
「是非共。お願いします」
「君は?」
「勿論です」
ナタナエルもそれに頷いた。
「是非」
「で、どんな話なんだい?」
ニクラウスがホフマンに尋ねてきた。
「まさかとは思うけれどあの話なのかい?」
「ニクラウス、今は静かにしていて」
「わかったよ」
彼はそれに頷くと空いている席に座った。
「じゃあ話すんだね」
「どんな話かな」
「まずは聞いてみるか」
「その前に一杯」
ホフマンはまずはまた一杯所望した。すぐにジョッキに一杯の黒ビールが運ばれて来る。ホフマンは運んで来たボーイに礼を言うとすぐにそのビールを飲み干した。そしてそれから述べた。
「さてと」
リンドルフは学生達が座りホフマンがその中央に座ったのを見てまずは懐から時計を取り出して時間を見た。
「あと一時間あるな。一時間だ」
そう呟いて禍々しい笑みを浮かべた。口が耳まで裂けんばかりの笑みであった。
「それで全てがつく。詩人殿の驚く顔が見ものだな」
見れば彼の席は面白い場所にあった。ホフマンは中央にいた。その彼を左手に見ていた。最後の晩餐においてキリストを見るユダの位置であった。
「皆さん」
ここで店の方から声がした。
「そろそろオペラの幕が上がりますけれど」
「今はいいよ」
学生達はそう返した。
「ドン=ジョバンニは明日もやるんだろ?」
「ええ」
「だったら明日でも見られるし。それに昨日も観たし」
「美人も三日見れば飽きるし。明日でもいいよ」
「そうですか。それでは」
「うん。今はそれより」
「ホフマンさんの話を聞きたいんだ」
そしてホフマンに注目した。彼はまたジョッキを飲み干していた。もう顔が真っ赤になり目は座っている。完全に酔ってしまっていた。だが酒に酔っているのか他のことに酔っているのかまではわからない。
「じゃあそろそろいいかな」
「はい」
学生達は応えた。
「何時でもいいですよ」
「お願いします」
「そしてそれが終われば奴は奈落の底だ」
だがリンドルフの声は誰にも聞こえなかった。しかしこう呟いたのは事実であった。
「全ては。わしの手の中よ」
「それじゃあそろそろ話をはじめるから」
「静粛に」
「はい、静粛に」
学生達はナタナエルの言葉に応えそれぞれホフマンに注目する。ホフマンはそれに応えてまず咳払いをした。それから言う。
「それでははじめるよ」
「はい」
「まず最初の話だけれど」
「それは」
「オランピアの話だよ」
そして話をはじめた。彼は酒を飲みながら話をはじめた。
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