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ホフマン物語
第四幕その七
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。そしてその空いた席に座る。
「それでははじめますかな」
「はい」
「言っておきますがそう簡単にはいきませんぞ」
「それは承知のうえです」
 ホフマンは真剣な顔で言葉を返した。
「こっちも賭けるものがありますから」
「賭けるもの」
「はい」
 これにはニクラウスが答えた。
「おわかりだと思いますが」
「殊勝なことですな」
 ダペルトゥットはそれを聞いて不敵に微笑んだ。
「友人の為に。ですがこちらもこれが仕事なのでね」
「そうでしょうね」
 ホフマンはこれに頷いた。
「貴方にとってはね。ですが今の僕の仕事は」
「心を取り戻すこと」
「そういうことですね。ではいきます」
 勝負がはじまった。二人はそれぞれ配られた五枚のカードに目を通す。
 ダペルトゥットはそのカードを見てから表情を変えずに一枚替えた。だがホフマンは動かない。
「宜しいですか」
「はい」
 ホフマンは頷いた。そして双方それぞれカードを前に出した。
 ダペルトゥットはフォーカードであった。十三が四つ並んでいた。
「フォーカードですか」
「そして貴方は」
「僕の勝ちですね」
 それを見た彼はニヤリと笑って返した。勝負の間は笑わなかったがここではじめて笑った。
「ほら」
 そして自分のカードを指し示す。そこには十一の四枚のカードとジョーカーがあった。
「ファイブカードですね。僕の勝ちです」
「ふむ」
 それを見たダペルトゥットは少し顔を歪めさせたがそれは一瞬のことであった。すぐに顔を戻してホフマンに対して問うた。
「では何をお望みですか」
「彼の心を」
「わかりました。それでは」
 頷くと右手の親指と人差し指を鳴らした。それで終わりであった。
「これで宜しいですかな」
「はい」
「心を!?」
 客達はそのやり取りを見て首を傾げさせた。
「彼等は何を賭けているんだ?」
「女じゃないのか?」
「だったら彼なんて言うか?」
「何なんだ、一体」
「面白い勝負だけれど変だな」
 シュレーミルもそれを不思議に思っていた。
「お金を賭けているわけでもなし。心って何なんだろう」
「どうやら彼は気付いていないみたいだな」
 ニクラウスはそれを聞いて呟いた。
「自分のことには」
 見れば彼の影がシャンデリラに照らされて映っていた。それが何よりの証拠であったが彼は気付いてはいない。むしろ気付いていない方が幸福だったかも知れないが。
「それでは次ですな」
「はい」
 二人はまた勝負をはじめた。ダペルトゥットはカードが配られる間にホフマンに対して問うてきた。
「次に賭けるものは」
「僕です」
 彼は言った。
「僕のことは僕で決めます。それでよいですね」
「わかりました」
 ダペルトゥットはそれを聞いて笑った。
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