第二十話 プールの妖怪その四
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「相手が男の人だと」
「浮気にならないっていうのね」
「そう。私も相手以外の男の人には心を寄せたくないわ」
これは愛実も同じだ。
「それでも相手が女の子なら」
「別にいいっていうのね」
「自分でもそう思うからね」
「そういえば私も」
「そうよね。けれど同性愛ってどうしても」
「理解出来ないわよね」
愛実もまた言う。
「どうしても」
「人のそれぞれの嗜好だけれど」
だがそれでもだった。
「ちょっとね」
「何かそういう噂になってもね」
「私達はどうしてもね」
「そういう関係って言われても」
実際は違うことだった。二人でこうした話をした。
「違うからね」
「ねえ、愛実ちゃん」
聖花はここで愛実にこう言った。
「若しもだけれど」
「若しもって?」
「キス出来る?」
かなり踏み込んで愛実に問うた言葉だった。
「それ出来る?」
「キス?」
「そう、キス」
それをだというのだ。
「私と出来る?」
「頬っぺた位ならひょっとしたらだけれど」
愛実は聖花のその問いに極めて難しい顔になり答えた。
「けれど唇と唇はね」
「舌を入れ合ったりとかは?」
「そんなの無理よ」
ディープキス、例え聖花が相手でも同性相手にそれはだった。愛実は心から引いた顔になって聖花に答えた。
「ちょっと。男の子でも心から好きな相手じゃないと」
「無理よね」
「絶対に無理、聖花ちゃんには悪いけれど」
「悪くないわよ。私もね」
問うた聖花自身もだというのだ。
「愛実ちゃんでも」
「無理よね、やっぱり」
「女の子同士でそんなの絶対に無理よ」
「それじゃあだけれど」
聖花の問いから愛実も問うた、しかもかなり踏み込んだ内容だった。
「セックスとかは」
「女の子同士でよね」
「そうしたことはもう」
「気持ち悪いわね、本当に」
聖花はここまで来ると心から身震いした。
「そんなのは」
「ディープキス以上によね」
「愛実ちゃんは友達だから」
その身震いしている顔で愛実に答える。
「そんなのはとても」
「でしょ?何で女の子同士で」
「ううん、わからないっていうか」
「無理、絶対に無理よ」
愛実は自分で言ったことだが女同士のそうしたことには心から拒絶した。
「何で女の子と」
「やっぱりね。人それぞれよね」
「少なくとも私達はね」
「そういうのは無理だから」
つまりノーマルだというのだ、二人はそうだった。
それで一緒に鉄道博物館にいても共にいるが手を握り合うことも絡み合わせることもなく並んで歩き回っていた、そうしていた。
それはプールでも同じだった。競泳水着を着てプールサイドにいると。
周りのクラスメイト達が今も一緒にいる二人に囃し立ててこう言ってきたのだった。
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