暁 〜小説投稿サイト〜
シャンヴリルの黒猫
Chapter.1 邂逅
7話「冒険者ギルドポルス支店 (2)」
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くと、丸いピンで刺さっていた依頼紙を一枚だけ破り取る。先程と同じ受付に持って行くと、受付嬢は眉間に僅かなしわを寄せてこちらを見た。……どうやらアッシュがこの依頼を受けるのに不服らしい。

「あの、あなたまだ冒険者になって5分と経ってないんですよ? 確かにこれは報酬もギルドポイントもFーのランカーには魅力でしょうけど、生き急がずに、まずは契約金無しの依頼から始める事をお勧めします」

 お勧めしますとは言っているが、声色を見ても、この受付嬢がアシュレイにこの依頼を受けさせないことは明白だった。溜息をつきたくなるが、どうにかして説得しようと口を開いた瞬間、思わぬところから助け船が来た。

「大丈夫よ、私が同伴するわ」

「…あなたは?」

「B+ランカーのユーゼリア=シャンヴリル。召喚魔法士よ。これで彼がこのクエストを受けてもいいでしょう? それにこれは元々F系ランクの依頼票。あなたが口出しすべきことじゃないわ」

 その言葉にムッとした顔を作りながらも、茶髪の受付嬢は手早く手続きを済ませた。「折角心配してやったのに」といった心情だろう。

 因みに、先に受付嬢が言っていた「契約金無しの〜」というものは、報酬も3ケタという格安クエストなのだ。内容はというと、例えば討伐系ならばゴブリン3体の駆除。採取系で言えば、5km先にある丘のなんたら草を3束とってきてほしいとか。
 要するに、簡単なものだ。はっきり言って、ゴブリン3体の駆除など報酬を出さなくても、最寄りの村の男衆10人が手伝えば簡単に事は終わる。だが、そこを敢えてやるのには、ギルド側の思いやりというものがある。村人ならば少なくとも10名は必要であろうゴブリン3体を、1人でまずはやってみろというわけだ。ここで契約金などをつけてしまうと、逆にギルド側としても痛手となる為、また駆け出しの金がない冒険者の為に、こういった簡単すぎるクエストには契約金が全くついていなかった。

「さて。じゃ、いきましょうか!」

「何で俺よりもユリィさんの方がわくわくしてるんでしょーかね」

「だって、なんかアッシュって強そうだし!」

「……どうしてそう思う?」

「勘!!」

 拝啓、享楽の魔人ノーア=ナ=ヴュラ様。貴女絶対この子気に入ると思います。魔人の遣い魔の強さの判断に「勘」て……。ああ、ホント気に入るだろうなぁ。美人だし。

 何故か疲労を感じたアシュレイだった。

 ふと、手元のギルドカードを見やる。
 アシュレイ=ナヴュラ。ランクF-の剣士。22歳男。人間で拠点は無し。称号も無い。軽装備、預金ゼロ。祝福は…

「……享楽魔神ノアナヴェイラ」

 あの、桃色の髪の少女の名だった。
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