第四幕その二
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それを聞いてホフマンの顔が暗くなった。ニクラウスはそれを見て彼が戻ってきているのを感じていた。だがそれをあまり喜んではいなかった。
「またか」
彼は心の中で舌打ちした。しかしそれは見せることなくワインを飲み、パスタを食べ続けたのであった。
「おや」
シュレーミルはここでジュリエッタに気付いた。
「これはこれは」
そしてジュリエッタに歩み寄って来た。ホフマンはそれを見て更に不機嫌な顔になった。
「ジュリエッタさん、今晩は」
「はい、今晩は」
職業柄であろうか。ジュリエッタはにこやかに笑って彼に挨拶を返した。
「今日は素晴らしい大晦日になりそうですね」
「そうですね。ここのワインも美味しいですし」
「ここの酒は絶品ですぞ」
彼は上機嫌でこう語った。
「何故なら私の家が経営しておりますから。味は私が保証致します」
「それはどうも」
「そしてこちらの方々は」
「どうも」
ホフマンとニクラウスは彼に顔を向けて挨拶をした。
「見たところこちらの方ではないようですが」
二人の彫が深く、そして白い顔を見てこう言った。ラテン系の顔ではないのがすぐにわかったからである。
「ドイツから来られた方々ですわ」
「ホフマンです」
「ニクラウスです」
二人はジュリエッタの仲介を受けてそれぞれ挨拶をした。
「ホフマンさん」
シュレーミルはそれを聞いて何かに気付いた様であった。そして彼に問うてきた。
「若しかして」
「何か」
「貴方はあの詩人のホフマンさんでしょうか」
「ええ、そうですが」
彼はそれを認めた。
「あの有名な」
「有名かどうかはわかりませんが僕は詩人です」
彼は答えた。
「そしてそれが何か」
「いやあ、こんなところで御会いできるとは」
シュレーミルは満面に笑みをたたえて言葉を返してきた。
「貴方の砂の男と顧問官クレスペルは拝見させて頂きましたよ」
「あれをですか」
それを聞いて何故か顔色を悪くさせた。
「素晴らしい作品でした、どれも」
言葉を続ける。
「ちょっとあんなのは。想像もつかないですね」
「僕個人の経験をモデルにしたのですけれどね」
「貴方の」
「はい。まああまりいい思い出ではないですが」
口を濁してこう述べる。
「色々とありましたから」
「そうだったのですか」
「そしてシュレーミルさん」
ジュリエッタが彼に声をかけてきた。
「はい」
「今宵の予定はありますか?」
「とりあえずは騒ぐつもりです」
彼は屈託のない顔でそう述べた。
「今年最後の日ですからね。名残惜しむ意味も含めて」
「左様ですか」
「マダムはどうされますか?」
「私もまだ決まっていません」
ジュリエッタはにこやかに笑ってこう返した。
「けれど。楽しく
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