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ホフマン物語
第二幕その五
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笑った後でホフマンに声をかけてきた。
「さあ貴方も」
「スープをですね」
「はい。さあどうぞ」
 そう言って奥の部屋に案内しようとする。
「彼女はいいのですか?」
「節制しておりまして」
 彼はこう言って誤魔化す。
「あまり食べないのですよ」
「そうでしたか」
「はい」
 オランピアは頷いた。そしてここでもスパランツェーニは彼女の肩に触れていた。しかしホフマンはそれには気付かなかった。
「では皆さん参りましょう」
「はい」
 客達は隣の部屋に消えていく。部屋にはオランピアだけが残った。彼女が一人いるとすぐそこにホフマンがやって来た。
「あの」
 ホフマンはおずおずと彼女に近付いてきた。
「オランピアさん、申し上げたいことがあるのですが」
「はい」
 彼女はそれに応えた。
「実はですね」
「はい」
「貴女のその眼差しと声が」
「はい」
「とても気に入りまして」
「はい」
 彼女は無機質に頷き続ける。
「僕は今一人です。そして貴女も一人でしょうか」
「はい」
「それは有り難い。神の配剤だ」
 ホフマンはそれを聞いて神に感謝の言葉を述べた。
「では申し上げましょう」
「はい」
「これから。二人で生きていきたいのですが」
「はい」
「宜しいのですか?」
「はい」
 彼女は相変わらず頷き続けるだけであった。
「何ということだ。夢ではないのか」
「はい」
「僕達の魂は一つになれるんだ。永遠に」
「はい」
「貴女は僕の太陽だ。僕の心を照らし出す」
 しかしオランピアはそれには応えなかった。
「どうかしたのですか?」
 応えるかわりに部屋のあちこちを動きはじめた。まるでホフマンを避けるように。
「オランピアさん、どうしたんですか」
 ホフマンはそれを見て自分が避けられているのでは、と危惧を覚えた。
「僕を避けられるのですか?」
「やっぱりここにいたか」
 ここでニクラウスが部屋に入って来た。
「ニクラウス」
「何をやっているんだ、一体」
「聞いてくれ」
 呆れた様な声のニクラウスに対して情熱的に語り掛けた。
「彼女は僕を愛しているんだ」
「彼女がかい?」
「ああ。今告白をしたら頷いてくれた。これが何よりの証拠だ」
「はい」
「ほら」
 立ち止まって頷いたジュリエッタを指差してこう言った。
「なっ、本当だろ」
「あの声で言ったのかい?」
「ああ」
 彼は頷いた。
「何度もね。君も聞いただろう?」
「うん」
「この通りさ。彼女は僕を愛してくれているんだ」
「君は正気なのか?」
「!?一体何を言うんだ」
 ホフマンはそこの言葉に頭を打ち据えられたように感じた。
「僕が正気じゃないとでも言うのかい?」
「少なくとも目は覚めてはいない」
 
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