第二十六話
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うんと幸せそうに頷く。こんな可愛い妹が欲しかった。彼女が山田鷹二の中の人だろうと『そんな細かいことはどうでも良い』と思えるほど脳がヤラれていた。彼が冷静であればどう考えても細かいことではない事くらいは分かっていたはずなのだが……
「じゃあ、私のことは成海って呼んで。お兄ちゃんが呼びたいならナルでも良いよ」
一気に畳み掛ける山田だが、そうは問屋が卸さない。普段は共闘体制にある山田だが、彼女の独走を許すほど尾津は甘くなかった。
「じゃあ、私の事もマコって呼んで欲しい……兄様」
「あ、あにさま!?!?!?!」
そのレトロチックな呼称の一撃に芝山は自分の胸がときめいてしまうのを止める事は出来なかった。
「私なんかじゃ駄目かな?」
大人の色気を纏いつつ、凛々しくハンサムな彼女が見せる年相応の可愛らしさから生まれるギャップの破壊力は絶大で、芝山の理性の防衛陣は塹壕ごと吹き飛ばされた。
「いやいや、全然駄目じゃないよマコちゃん」
完全にデレデレの芝山に、直接的な色気とは違った戦い方があることを尾津は知った。
「……ずるい」
起死回生の搦め手をあっさり真似て、しかもより大きな効果を生み出した尾津を山田は睨む。
一方、梅木は完全に流れに乗り遅れた。山田がお兄ちゃんで、尾津が兄様。それに対して自分は何と呼べば良いのか咄嗟に思い浮かばなかった。それに成海からナル。誠からマコと愛称で呼ばせるまでに至ったのに対して、自分の名前は雨月で、頭の2文字で「うづ」下の2文字で「づき」と可愛くない。
とことん祟る自分の名前に対して憎しみすら覚えていた。恨むならむしろ父親のうっかりを恨むべきだった。
「あ、あの……」
自分もこのタイミングを逃さずにアピールしなければと焦ったが、しかし何と言えば良いのか彼女の中で答えが出ていなかった。
「どうした梅ちゃん?」
「私のことは、私のことは……」
焦るばかりで梅木の何といえば良いのか言葉が出ない。
「うん?」
「……私のことは、梅ちゃんと呼んでください……ご主人様」
その瞬間、世界の時間が止まった。
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