四十七 取り引き
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「馬鹿な…ッ、木遁だと……!?」
普段からは想像もつかないほどの焦りを見せるダンゾウ。狼狽する主を部下達は不安げに振り仰いだ。張り詰める緊張。
緊迫めいたこの有様に似合わぬ、麗らかな木漏れ日。僅かでも風が吹けば、緑の波がさわさわと枝葉を鳴らす。合間から洩れる陽光が淡い陰影を地に落とした。
突如崖に生えた樹木。さんざめく枝葉が寂然としたその場で囁き続ける。ダンゾウを始め『根』の男達の頬を伝った冷や汗が地面に更なる影を落とした。
「……そうか!お前は大蛇丸の実験体だな?初代火影の遺伝子を組み込まれたか」
得心がいったと頷くダンゾウ。だが彼の期待を裏切ってナルトは微笑を浮かべた。
「ご想像にお任せするよ」
変わらぬ笑顔。サイ以上に読めないガキだ、と内心悪態をつくダンゾウの頭上から、ナルトの声が降ってくる。
「うちはサスケの暗殺中止指令はまだかな?」
催促の言葉に、ダンゾウは憤然たる面持ちで天高く腕を伸ばす樹木を仰いだ。忌々しげに告げる。
「とっくに伝令を放った」
「結構」
地面にさしたナルトの影が僅かに身じろぐ。
笑ったのか、それとも嗤ったのか。どちらにしても不愉快な事に変わりは無い。
「高みの見物とは、いいご身分だな」
再度口にした皮肉。当初と違って殺意を醸し出すダンゾウの声音に、ナルトは肩を竦めてみせた。
「兄同様、弟までもが犠牲になるこの事態が忍びなかっただけだよ」
「大した博愛主義だ。だが世界中の人間がそうとは限らない。何れ何処かで命を落とす羽目になる」
言葉の端々に込められた遠回しな催促。サスケだけではなくイタチの名誉をも回復するよう促すナルト。
言外に殺すと宣言する。此処を無事にやり過ごしたとしても各地にいる自分の部下達が貴様を追い詰める、と凄むダンゾウ。
互いに笑みを絶やさない両者。双方の会話を見守っていた彼らは皆ぞくりと寒気を感じた。
朗らかな空模様に反して怪しい雲行き。何処となく薄ら寒さを覚え、『根』の男達は武器を強く握り締めた。樹木の主と彼ら自身の主、交互に視線を滑らす。
笑顔の裏に隠された真実。それを見極めようと固唾を呑む。
一向に進まぬ押し問答にナルトが嘆息を零した。とん、と木の幹を踵で軽く叩く。
「大蛇丸を信用しているのか?」
唐突に訊ねられたダンゾウが眉根を寄せる。無言で答えを返す彼に「向こうはそう思ってはいないみたいだね」とナルトの踵が再度幹を蹴った。
途端、樹の根元に寄り掛かっていた杖がぴくりと動きを見せる。動くはずのないダンゾウの杖が徐々に変化し始めた。
否、元の姿に戻っているのだ。
その場に居合わせた者達の視線が釘付けになる。
驚愕の視線を浴びつつ、ソレはちょろりと舌を伸ばした。とぐろを巻き、従順そうにナルト
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