四十七 取り引き
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えようと手を伸ばす。擦り抜けた陽光を拳に閉じ込めて、ダンゾウは薄く笑った。
「うずまきナルト…。お前は『根』にこそ相応しい……」
動かぬ蛇をそのままに、ダンゾウは月光ハヤテを伴って崖を離れた。完全に彼らの気配が遠退いた事を確認する。様子を窺っていた彼はゆっくりとその身を起こした。
潜んでいた蛇の影。影と同化していたナルトは術を解いて先ほどと同じ場所に佇んだ。
眼の端に映った動かぬ蛇の死体に笑みを浮かべ、再び印を結ぶ。幻術を解くと、そこにあったのは物言わぬ、ただの杖だった。
大蛇丸とダンゾウの繋がりに亀裂を入れる。その為に幻術で杖を蛇に見立てたのだ。
だが上手くダンゾウの眼を誤魔化した張本人は浮かぬ顔をしていた。岩場に腰掛け、口元を隠すように両手を組む。
(やはり予想通りにはいかないか…)
うちはイタチの汚名返上。当初の目的を完遂出来なかったとナルトは目を閉ざした。予め瞼に描いていた想像とは僅かに違う結果。
正直なところ、彼がうちはサスケの暗殺の企みに気づけたのは本選が始まる寸前だった。イタチの名誉が完全に回復するのを望んで、ダンゾウとの取引材料を事前に用意しておいたのだが、サスケ暗殺を阻止する為には聊か条件が足りなかったようだ。
実際、イタチの身になって考えれば、サスケを優先するだろうとナルトは理解していた。長年のつき合いだ。イタチの考えなど手に取るようにわかる。だから彼は切り札をサスケに用いたのである。けれどやはり予想通りに事が運ばなかった現実を彼は嘆いていた。
物憂げに一度吐息を漏らした後、ナルトは自分自身に言い聞かせるように呟いた。
「…始まりはこれからだ」
改めて眼を開ける。空の青より深い瞳の青が妖しく輝いた。
本選会場にいるであろう彼女に連絡をとる。【念華微笑の術】でナルトは訊ねた。
『サスケは無事か?』
真っ先にうちはサスケの安否を気にするナルトの脳裏で、怒鳴り声が響く。
『開口一番それかよ!!』
『生きてるのか?』
『…我愛羅との試合で疲れてるみてーだけどな。ピンピンしてらあ』
サスケが生きているという事はダンゾウが無事暗殺中止指令を出したという事。多由也の不貞腐れた声を聞き流しながら、ナルトはほっと安堵した。
『それより始まるぜ、ナルト』
少し声を落として多由也が囁く。その声音には緊張が滲んでいた。
『木ノ葉崩し、開幕だ』
刹那、森向こうの木ノ葉の里でドオンッと地鳴りが轟いた。
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