四十七 取り引き
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さりげなく自分の推薦候補を否定され、ダンゾウの眉間の皺が深くなる。けれど彼は部下が耳打ちした一言で思い直した。
「月光ハヤテがうずまきナルトと接触したのは中忍予選試合のみ。更に彼を試験失格にした張本人ですから、仲間ではないでしょう」
その通りだった。現に目前の二人の間には仲間を思わせるモノなど何一つ存在していない。ただハヤテが自分を引き摺り出したナルトを睨んでいるだけだ。
ダンゾウと部下の秘かなやり取りに気づかぬふりをして、ナルトが念を押した。
「くれぐれもイタチの件、忘れないでもらおう。またイタチにサスケを大蛇丸に引き渡そうとしたことを話されたくなかったら、彼には二度と手を出すな」
そこで言葉を切ったナルトがハヤテをちらりと見遣る。鋭い視線に苦笑しつつも「大事な証人だ。丁重に扱う事を勧める」とハヤテの命の保証も取り引きの内に含んだ。
「…わかった。これから先、お前に連絡したい時はこの者に伝言を頼もう。それでいいな?」
渋々ながら了承したダンゾウにナルトは頷きを返した。状況判断が出来ていないハヤテを置いて、取り引きはようやく完了した。
その時、猫の声が高らかに崖上で響き渡る。まるで取り引きが終わった瞬間を見計らうように。
鳴き声に気を取られたダンゾウが後ろを振り返る。彼同様『根』も背後に視線を投げた。
そして次に顔を前に戻した時、目の前にあった巨大な樹木は跡形も無かった。衝撃に見舞われ、大きく目を見開く彼らの視界に映るのは嶮しい崖上で唸る風のみ。
ナルトの姿は忽然と消えていた。
寸前までナルトがいた地点を愕然と凝視する。我に返った部下の一人が逸早く号令をかけた。
「急げ!まだこの近くにいるはずだっ!!」
ナルトの行方を探索しようと今にも飛び出そうとする。しかしながら慌てふためく彼らを、『根』の創始者は冷静に押し止めた。
「やめておけ。無駄だ」
「しかし…っ、」
部下の進言を問答無用で切り捨てて、崖から眼下の森を見下ろす。波打つ緑の海原を眺めるダンゾウの瞳には渇望の色があった。
「それより伝令を放て。『うちはイタチは逆賊ではない』『あの事件は彼一人の判断ではなかった』と」
「よ、よろしいのですか!?」
「どうせ誰も信じはしない。だが暫くはあの子ども…いや、うずまきナルトに従ってやろう」
一度双眸を閉じたダンゾウは、自身に陽光を降り注ぐ太陽を仰いだ。戸惑う部下達の中でサイは見た。主の愉しげな顔を。
『根』の者達に囲まれて警戒の面持ちだったハヤテが顔を伏せる。だが俯いた顔は秘かにほくそ笑んでいた。
光環を抱く太陽は、澄み切った空で燦々と輝いている。天高く光を降り注ぐ、遠くて近い存在。
雲間から射し込む光芒を捉
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