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渦巻く滄海 紅き空 【上】
四十七 取り引き
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『うちは一族殲滅事件』の真相も、自分を破滅に追い込む真実も、その手に握っているナルト。
ならば彼の死が己に安穏を齎すと考えたのだが、木遁忍術を目の当たりにしてダンゾウの思考は払い拭われた。また、更に次々と己を追い詰める周到さが逆に気にいった。

欲しいのだ。その年で木遁を自在に扱うその技量も自分と渡り合えるその話術も何もかもが。

この子どもが己の手元にいればどれだけ力強いだろう。『根』の中でもさぞかし立派な右腕となろう。仮に大蛇丸の実験体であろうが部下であろうが、必ず『根』に引き入れてやる。いや、むしろ大蛇丸には勿体無い。

危険人物には違いないが、その存在の器にダンゾウは魅せられた。そう思わせる何かがその子どもにはあった。




何時の間にかナルト自身を部下に欲し始めたダンゾウは「パイプ役が必要だ」とやけに決然と提案した。
「この取り引きが上手くゆく為にも。…本来ならば署名が施された血判状が最適だが、証拠の品があってはまたお前に弱みを握られる可能性がある。だから今度は生きた証人を使う」
「……いいだろう」
急になぜか取り引きに積極的に応じるダンゾウ。その変わり様に内心首を傾げながら、ナルトは彼に承諾を返した。

「それではこのサイを…」
「待て」
ダンゾウの推薦を遮って、ナルトが木の幹に手を触れる。途端、樹木の太い腕が撓ったかと思うと、崖下の出っ張った岩場に潜んでいた人物を引き摺り出した。


唖然とする『根』の前に転がり出た彼は、身体を強張らせ、声にならぬ悲鳴を上げる。


「…お前は確か……」
顔を覗き込んだダンゾウがその者の名を告げた。顔色の悪い男の顔が更に悪くなった。
「月光ハヤテだったな。こんなところで何をしている」
「どうやら聞き耳を立てていたらしいな」
白々と言ったナルトをハヤテは睨みつける。そしてダンゾウに向き合うと早口で弁解した。

「ただの通りすがりですよ、ゴホッ。カカシさんにサスケ君の試合が近い事を教えただけでして…」
「それは親切な事だ。だがお前は木ノ葉病院で療養中だったはず。こんな場所でうろうろしているとは………火影の命令か」
もしやと怪しむダンゾウに、ハヤテは慌てて声を荒げた。

「いえ、偶々です…ゴホっ。病院を脱け出してすぐ帰るのもあれでしたから散歩を…」
「そんな嘘、誰が信じるか!」
ハヤテの言い分を真っ向から否定する『根』。息巻く部下達を抑えるダンゾウの耳にナルトの涼しげな声が届く。

「ちょうどいい。彼をパイプ役にしよう」



一瞬の沈黙。暫しの間を置いて、ダンゾウは「正気か?」と眉を顰めた。不満げな彼にナルトが小さく微笑する。

「彼は中間だ。『根』の息が掛かっている者ではないし、俺の仲間でもない。表の忍びだ」

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