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渦巻く滄海 紅き空 【上】
四十七 取り引き
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もりはない。全ては目的を達する為の手立てに過ぎない。



「今まで貴方が行ってきた不正全てを明るみにしたいのならば、止めはしないがな」
皆に認められてこその火影。火影になる事をなにより望むダンゾウへ痛根の一撃を加える。


「民あっての王だ。違うか?」



















「ワシを脅すか」
「何度も言わせないでくれ。これは頼み事でも脅迫でもない。取り引きだよ」

見下ろす青い双眸。木漏れ日がナルトの髪をきらきらと光らせる。
樹の枝上にいる彼は見知らぬ者が見れば天使のように見えるだろう。だがダンゾウにとってはこれ以上ないというくらい憎たらしい悪魔だった。

いきなり里に現れた、しかも子どもに輝かしい火影への道を壊される。今まで築き上げてきたもの全てを台無しにされる。
屈辱に耐え切れず、ダンゾウの指先が無意識に右眼の包帯に触れた。解こうとする。だがその素振りはナルトの一言で遮られた。

「此処にいるのは味方ばかり…そう思い込まないほうがいい」



瞬間、何処からか殺気が放たれた。



決して眼前のナルトからではない。だが殺気の矛先は確かにダンゾウ一人へと向けられていた。仲間がいたのか、と苦々しく舌打ちする。出所を探ろうと視線を巡らしながら「ワシを殺すのか」とダンゾウはナルトに問い質した。

「まさか。せいぜい記憶を消させてもらうよ……三代目火影と同じように」
ナルトの何気無い言葉にダンゾウは目を瞬かせた。
ヒルゼンの記憶は消されたのか。いつ、何の為に。

怪訝な顔をするダンゾウ。返答を求めるその視線に気づいていながら、ナルトはその身を空に投げ出した。高い枝から飛び降りる。


とんっと軽やかな音を立てて、彼は地上に降り立った。横たわる蛇の死体の傍らで、取り引きを持ち掛ける。


「せめてイタチの罪を軽くするように手配してくれ。サスケの暗殺中止を差し引いたとしても、逆賊の濡れ衣は彼一人では重過ぎる」
「…だがもしイタチがこの里に戻って来た場合はどうする?」
突き刺さる殺気を背に感じながら、ダンゾウが訊ねる。

自分の管轄である『根』に、イタチに手を出すな、と事前に告げていたとしても、それ以外の忍び達は躍起になって彼と敵対するだろう。

「ならば里に来た場合こちらが対処する。その際イタチ及び彼の仲間と対峙する者が誰であっても見逃してほしい。それが例え指名手配されている抜け忍であっても」
ダンゾウに反論する暇さえ与えず、ナルトは言葉を続けた。

「火影直属である表の忍びにもそのように通達してもらおう。裏で手を回していただきたい」
次々と挙げられる条件にダンゾウは顔を顰めた。だがチラつく青い炎にやむを得ず頷く。

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