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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
NO.1、再び(2)
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口調でゼークト提督と話しかけている。ゼークト提督が少将を見詰めた。

「申請書は提督が決裁されております。その誤りを見抜けなかったとなれば過失を問われるでしょう。最悪の場合、提督御自身が不正に関与していた、故意に見過ごしたと取られかねません」
『馬鹿な! そんな事は有りえん!』

提督が顔を震わせて否定した。屈辱を感じているのかもしれない。でも少将は首を振って話を続けた。
「小官は提督を信じております。しかし監察がその可能性を無視するとは思えません。先程も申し上げましたが早急に提督の手で調査をされるべきかと思います」

少将は提督を気遣っている。この間の戦争で親しくなったのかな? ゼークト提督が大きな溜息を吐いた。
『……卿の言うとおりだな、直ちに調査を行うとしよう。それと今後の事だが駐留艦隊への補給は私の決裁の有る申請書のみ対応してくれ』
「承知しました」
『うむ、卿の心遣いに感謝する』

互いに敬礼を交わし通信が切れると少将がこちらに身体を向けた。スクリーンに向かうと柔らかく笑みを浮かべた。口パクちゃんは真っ青になってブルブル震えている。分かるわ、多分首の周りが寒いのね。

「聞いての通りです。補給に関してはゼークト提督と調整しました。御苦労様でした」
そう言うと少将は一方的に通信を切った。本当に御苦労様、口パクちゃん。もっとも大変なのはこれからだろうけど。

「フィッツシモンズ大尉、全員に通知してください。今後、駐留艦隊への補給はゼークト提督の決裁を必ず必要とする事。それから理不尽と思われる苦情に対しては私に回すようにと」
「はい」

いいなあ、直接指示を貰えるなんて。そう思っていると大尉が少将に話しかけた。
「先程の少将閣下ですが本当に不正を働いているのでしょうか」
ちょっと納得がいかないと言う口調だ。あんたね、ヴァレンシュタイン少将の対応に文句有るの! 副官でしょ、あんたは!

「さあどうでしょう、何とも言えませんね。ただ今後は補給業務に携わる事は無いでしょうし、駐留艦隊からこちらに無茶な依頼も無くなる事は確実です。それで十分ではありませんか」
少将がクスッと笑うとフィッツシモンズ大尉が呆れた様な表情をした。本当に嫌な女ね。

その後、ヴァレンシュタイン少将の言ったとおりイゼルローン駐留艦隊の補給担当士官は交代した。新しい担当者は妙に低姿勢でヴァレンシュタイン少将に“宜しくお願いします”とか言ってきた。口パクちゃんはどうやら本当に不正をしていたらしい。逮捕されて軍法会議にかけられるそうだ。軍籍の剥奪は免れないだろう。

今回の一件では皆が驚いている。ヴァレンシュタイン少将は駆け引きがかなり上手だ。ゼークト提督を上手く操って駐留艦隊を押さえつけてしまった。何時の間にそんな駆け引きを覚えたのだ
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