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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
運命の夜の先へ
一日の終わり
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ーヴァントを強化するために人間を喰わせる。

 魔術師として、効率的で合理的な手段。

 学園に仕掛けられた結界とてそうだ。
 他者を喰らって自身を補うために、マスターが仕掛けたものだろう。

 命の吸収(ライフドレイン)魂の捕喰(ソウルイーター)

 だが、それを是とする魔術師がいれば、非とする魔術師も存在するのだ。

「今は考えないでおこう。美綴、立てるか?」
「うん……なんとか」
「頑張って付いてこい。家まで送ってってやる」

 これくらいなら家で安静にしておけば回復するだろう。
 入院させるのも、魔術師側の関係で保護させるのも気がひける。

「はぁ……っく」

 フラフラと立ち上がる。
 覚束ない足取りで俺の後に着いてこようとするが、どう見ても倒れる寸前だ。

 フォローに回ろうと思った矢先、前に立っていた俺に美綴が倒れこむ。

「お、っと」
「あ……ごめん」

 いつもの快活さは何処へ行ったのか、見たこともないしおらしさで謝ってくる。

 いや、人間弱っているときなんて、誰でもこんなもんなのかもしれない。

「気にすんなよ……それと、ちょっとゴメンな」
「え、あっ……」

 脇下から肩を入れて、腰に手を回して身体全体を抱える。

 くっ、身長差もあってこの体勢は俺もキツい。
 いつもは気の強い女丈夫だと思っていたが、こうしてみると案外華奢だし、女の子らしい体つきをしている。

 以前耳にしたほど、体重があるとも思えない。

「ちょ……あんまりくっつかないで……」
「アホか。密着しなきゃ支えられんだろ。俺にくっつかれるのが嫌でも、ちょっと我慢してろ」
「ちがう……ほら、今日ずっと部活してたし……」

 ああ、そういうことか。

 つまり、汗臭いかもしれないのが嫌なのだろう。
 人にそう思われるというのも、自分がそうだと思われるのも同じことで。

 てゆうか、そんな乙女チックな反応するんだな、美綴って。

 こんな季節に女の子が汗をかくとも思えない。
 何より弓道は精神を鍛える意味合いの方が強いから、運動量自体は他の部活に比べれば少ない方だ。

「安心しろ。いつもと変わらずいい匂いしかしない」
「ばかっ……! いつもって何よ……!」

 少し元気になってきたのか、空いている方の手でペチペチと叩かれる。
 普段からかったときに飛んでくる拳に比べれば、蚊が刺したようなものだ。

 そうやって身体だけでなく意識も支えながら、気づけばバイクの元まで辿り着いていた。

「クロって……バイク持ってたっけ?」
「今日買ってきたのさ。そう考えればちょうどよかったよ、おまえん家まで抱きかかえて行くわけにもいかなかったからな」

 
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