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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
運命の夜の先へ
一日の終わり
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気配を探知した。
適当な場所でバイクを停め、フェンサーに話しかける。
(どうなった? 状況は?)
(逃げられたわ。アレは昨日の黒いサーヴァント……ライダーね)
(チ、そりゃあ雪辱戦といきたかったな……で、姿は確認したのに逃げられたのか?)
(それは……来てみたらわかると思う)
要領を得ない返答。
まだ日は出ているというのに、人通りのまったく無い路地に入る。
そこで佇むフェンサーは、一人の少女を抱きかかえていた。
「っ、美綴!?」
走り寄り、フェンサーから美綴を受け取る。
「血と生気をかなり吸われてるわね。命に別状は無いけれど、軽く見ていい状態でもない」
俺も魔術師ではある。中身の補給くらいならある程度できるが、失われた血液までは元に戻せない。
屋敷の工房でなら造血剤も作れるが、何の設備もないウチのアパートではポーションなど作れない。
とにかく失った生命力を魔力で補填し、急激に血液を失ったことで衰弱している肉体を補強する。
「おい、しっかりしろ!」
青白い顔。冷たくなった肌。
自身の温もりを移し替えるように、強く抱きしめる。
命に別状は無いといっても、放っておいていい状態でもない。
とりあえずは意識を取り戻してくれないと、どうすることもできない。
「おい、こら! 起きろ美綴!」
「ぅ…………」
声だけだが、反応が返ってくる。
症状は僅かながらに改善されているということでもあるが……頼むから、ちゃんと目を覚ましてくれ。
赤の他人がどうなろうと知ったことじゃないし、俺の与り知らないところで倒れるのならまだしも。
目の前でそんな弱ったところを見せられたら、助けないわけには、救わないわけにはいかないんだぞ。
「ぁ……っ…………クロ?」
「っ! そうだよ、黒守だ! 大丈夫か!?」
「う……なんだろ…………すごくだるくて……寒い……」
言葉を話せる様子を見て、ホッと息を吐く。
自分が着ていたジャケットを美綴に羽織らせる。
それだけで体温が戻るとは思えないが、何もないよりはマシだろう。
(フェンサー、ライダーは?)
(ダメね。もう魔力の残滓すら感じられない)
魔術師間では原則として、一般人に手を出すことは禁じられている。
魔術は秘匿するものであり、世に知られる可能性を排除するためのルール。
厳密には知られる事自体ではなく、知られることで魔術そのものの効力や価値が下がることを懸念して作られた掟だ。
逆に言えば、バレさえしなければいくら人が死のうと構わないのが魔術師である。
聖杯戦争においてもそれは例外ではない。
自分で補えない分を他から持ってくる。
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