弐ノ巻
輪廻
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れた。はやく、はやく。はやく助けないと。
兄上には霊力があるから大丈夫と、そんなことも頭をよぎったけれどなぜか不安だけが増した。
そうだあたしは不安なんだ。なぜか。そしてなにか抗えないものに惧れている。あたしの力ではどうにもならないようなことに、絶望している。
いや、違う。あたしは絶望してしまわないように今走っているんだ。
誰かにあたしはぶつかって、その人と一緒にもんどりうって転げた。体を支えようとついた手のひらを強かに擦ったけれど、あたしは即座にはね起きてまた走りだそうとした。その時、腕を掴まれた。
「離してっ!」
振り払った腕をまた掴まれた。強く。何か叫んでいる。やめてよ離して!あたしは我武者羅に腕を振り回した。
次の瞬間、頭に響く強く激しい衝撃で、あたしははっと動きを止めた。頬にじいんとした痺れが熱く広がる。
「瑠螺蔚さん!」
一気に世界が音を取り戻した。ばきりという屋敷の崩れる音、切羽詰まった人の声、入り乱れる足音、そういうものがすべて一斉に溢れだした。
あたしは腕を掴んでいる人を見た。高彬だ。
あたしはカッとなって腕を振るったけれど高彬は離さなかった。
「離して!」
「しっかりしてくれ!どこへいくんだ、瑠螺蔚さん!」
「兄上がまだいるのよ、あの炎の中に!」
あたしの言葉に高彬は険しい顔のまま、ぴくりと眉を動かした。
「俊成殿は無事だ」
そう、静かに言った。
「うそよ」
その言葉は口をついて出た。そう思って言ったわけじゃなく、考えるまえになぜか零れた言葉だった。
嘘。
涙が流れた。
悲しみが、堰を切ったように心に渦を巻いた。
「嘘じゃない。だから、とりあえず佐々家でもいい。どこでもいいから、安全なところに…」
「嘘よ。あんたは、嘘をついている。あたしにはわかる。離して!」
あたしは思いっきり高彬の頬を打って突き飛ばした。
高彬が驚いたようによろけて、その手があたしから離れた。
あたしはすかさず走り出そうとしたけれど、高彬に肩のあたりを掴まれそうになってごろごろと転がった。
すぐさま起き上ろうとしたけれど、高彬に馬乗りになられて肩を押さえつけられた。
ばたばたと手足を暴れさせてもひっかいても叩いても高彬は動かなかった。
自分の無力さに涙が
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