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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
閑話 死者(四者)は何を夢想するのか
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にそれを売りつける。そうするとまたそのお得意様が新しい情報をくれるのだ。
そうやって集めた情報は危険なものも多くある。でも構わない。私はそういった日々を望んでいたのだから。
だが、そうして過ごして居る内にある日気がついてしまった。この日々に慣れを感じ始めたことを。慣れ、つまりはそれが日常となってしまったということだ。
愕然とした。非日常を求めても日常に陥る。変化しない日々はそれがどれだけ他者から見て異常でも日常と化してしまう。だから変化を求めた。こっそりと危険な情報を持っているのだと分かるように流してやった。変化を求めたからだ。
結果は成功といえた。将校軍人がその噂を聞きつけ利用しようとしたのだ。当時まだ開戦しておらず仮想敵国である連合諸国でのスパイごっこ。断れば死という安直な脅しまでつけて命令してきた。
表立っては怯えて見せたが内心では狂喜乱舞していた。より大きな変化が無ければ今の日常を変える事などできないとわかっていたからだ。
だがその任務もまた数年の時間も持たず日常と化した。どうすれば非日常を永遠に求められるのか、必死になって探し続けた。そこからでた結論は今在る現状の崩壊だった。内部から手引きして敵国に情報を送る。一種の二重スパイにもなるそれを行った。そして最後にはどっちにもばれてどちらも崩れた。私にとって安穏とした日常は崩壊し、軍との追いかけっこの日々が始まった。
それなりにこれも刺激的だった。築き上げて来たコネを使って逃げたり、逆に軍人を籠絡して利用したりとなかなかに面白おかしく過ごした。
でもある日、碌な用意も出来ずに森に逃げることになった。食糧も装備もなくなって飢えに飢えた私は自分の血を啜って生きた。
それでも困窮とした状況でいつの間にか私は意識を失い、軍に捕まっていた。
そうして牢獄の日々にも慣れて処刑される日をまっていた時に彼と出逢った。
私達娼婦はある意味で恋愛ごとに冷めている。だから育んでいく愛というものを知らないし、欲しいとも思わない。娼館に来る人間の中には当然妻子を持つ人間も居るのだ。そういったものを見れば愛などという形が無く、目に見えて壊れやすいものに幻想を懐くものなど居ない。
だが世の中には往々として例外が存在する。一目惚れというものだ。育てていた何人かの後輩の中でもある日、突然誰かを愛して、そしてそれまでの価値観が崩壊してく。そして何の益も無いであろうにその愛した相手に尽くす。そういったものだ。
だからこそ私はそういったものがあり、それは誰であろうとも止めることは出来ないものだと分かっている。今の私の様に。
彼に恋をした。いや恋などと言う薄いものではない。愛したのだ、と。そう理解した。これまでの日常が崩壊した。非日常は目の前の彼が(もたら)してくれると直感した。だから彼に私の総てを捧げることを誓
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