第五十一話 トライアングラー
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ルカの脳裏でレオンと会って話をした時のことを思い出していた。その時に見たバジュラの幼生の姿がだ。まさにそれであったのだ。
「バジュラが」
「バジュラが?」
「いえ、何もありません」
ナナセに言うわけにはいかなかった。だから話を止めた。
「それじゃあですね」
「はい、それじゃあ」
「ランカさんの歌聴きましょう」
こう言うのであった。
「今は」
「わかりました。それじゃあ」
二人はこうして歌を聴くことに専念した。そうしてだった。
コンサートは二人の飛び入りもあり盛り上がっている。アルトはそれを学校の屋上から聞いていた。ミシェルも彼と共にいる。
「なあアルト」
「何だよ」
まずはこうミシェルに問うたのだった。
「何でここでなんだ?」
「ここでって?」
「何でここなんだ?」
またミシェルに問うのだった。
「屋上なんかでよ」
「ここが一番聴けるからな」
「だからか」
「ああ、それにだ」
ミシェルはアルトにさらに話した。
「じっくりと話せるしな」
「話せる?」
「わかるだろ」
アルトに顔を向けてきての言葉だった。
「幾ら御前でもな」
「何かだよ」
「ランカちゃんの気持ちだ。この歌はな」
そしてアルトに話すのだった。
「御前への歌なんだよ」
「俺の・・・・・・」
「そう、御前へのだよ」
こうアルトに話す。
「この歌も前の歌もだ」
「・・・・・・・・・」
「その前の歌もだ。全部そうなんだよ」
「俺の為だってのか」
「そうだよ、御前への歌なんだよ」
アルトにさらに話す。
「わかったな。全部なんだよ」
「それじゃあ俺は」
「御前も気持ちをしっかり決めろ」
「俺の・・・・・・」
「どうするかな。多くは言わないぜ」
「おい、ミシェル」
アルトはそのミシェルに顔を顰めさせて言ってみせた。
「御前が言うのかよ」
「俺がか」
「いつも三股とか四股の御前が言うのかよ」
「ああ、言うさ」
ミシェルは悪びれずに返した。
「何故ならな」
「ああ」
「パイロットだ。後腐れのない相手だからな」
「だからいいのかよ」
「そうだ。けれそ御前は違う」
アルトを見据えての言葉だった。
「御前はな」
「違わないだろうがよ」
アルトは憮然として返した。
「俺だってな」
「御前はそれ以上に役者だ」
「御前もそう言うのかよ」
「言うさ。俺だってな」
ふとだ。ミシェルの顔が変わった。
「そろそろな」
「そろそろ?」
「いや、何でもない」
自分の話は何とか止めた。
「とにかくだ。決めろ」
「俺はか」
「ああ、決めろ」
またアルトに告げた。
「いいな。それじゃあな」
「おい、何処に行くんだよ」
「ちょっと用事を思い出した」
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