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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十五話 揺らめき
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い。
『構わぬ、その方が面白かろう』
「……」
面白い、そういう問題では無いと思うが……。

『フェザーンの高等弁務官だがマリーンドルフ伯が務める事になった』
「マリーンドルフ伯が……」
悪い人事ではない、誠実で常識のある人間だ。だが機略には乏しいだろう、その辺りをどうするのか。フェザーンはこれから混乱するはずだ、その中でマリーンドルフ伯の力量が試されるかもしれない……。

『それとクロプシュトック侯の反乱だがそろそろ鎮圧されそうだ。遅くとも今月内には鎮圧されるだろうとリッテンハイム侯から報せがあった』
「なんと」
何時かは鎮圧されると思っていた。だがこの時期に貴族達が戻って来る……。

『ミューゼル提督の地球鎮圧もそろそろ始まるはずだ。始まればそれほど手間は取るまい。こちらも今月内には片付くだろう』
「……」
貴族達も帰って来るが軍も帰って来るか……。そうか、改革実施の宣言はそれを見据えての事か。

先に既成事実を作っておこうと言う事だな。となると貴族達がどう巻き返しを図るか、軍の力を背景にブラウンシュバイク公達がそれをどう押さえつけるか……。これからが本番だろう、激しい駆け引きが続くはずだ。私の想いを読み取ったのだろうか。
『騒がしくなるな』
ブラウンシュバイク公が厳しい表情で吐いた。

通信を終えるとヴァレンシュタインを探した。艦橋で指揮官席に座りココアを飲んでいる姿が見えた。近づくと向こうから声をかけてきた。
「ブラウンシュバイク公と話したのですか」
「うむ、今終わった」
「そうですか」

それだけだ。ヴァレンシュタインはココアを飲むことに専念しこちらには関心を示さない、視線を向ける事も無かった。何となく神経がささくれ立った。幸い周囲には誰もいない、二人だけだった。
「卿はリメス男爵の孫だそうだな」
「……ブラウンシュバイク公から聞いたのですか」
「……そうだ」

平然としている、相変わらず視線を向ける事も無ければココアを飲むことを止めようともしない。変化が有ったとすれば答えるまでに僅かに間が有った事だけだった。
「一度だけ会いました。両親が死んだ直後です。孫として会ったんじゃありません、死んだ弁護士の遺児として会ったんです。その時ですよ、血が繋がっていると知ったのは。……葬式にも参列しました、弁護士の遺児としてね。寂しい葬式でした、リメス男爵家の親族は誰もいなかった……」
親族でありながら親族として参列できなかった……。

「……男爵を恨んでいるのか」
ヴァレンシュタインが私に視線を向けた、何の感情も見えなかった。
「……男爵の最後の頼みは私に御祖父さんと呼んで欲しいという事でした。私が御祖父さんと呼ぶと本当に嬉しそうだった」
淡々としている。まるで他人の事のようだ。だが話
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