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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十五話 揺らめき
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レンシュタインもその本を読んでいる、士官候補生時代にな』
「……まさか」
『あの男の事が知りたくて読んだのだ。……統治者は優秀でなければならない、その優秀な統治者を生み出す階級が必要だ、即ちそれが貴族……。ルドルフ大帝の考えだ』
『だが現状はその優秀であるべき統治者を貴族は生み出すことが出来なくなった。となれば貴族には存在価値など有るまい、貴族階級など害有って益無きものよ……』
「ブラウンシュバイク公……」
声が震えていた、そんな私を見て公は今度はクックッと笑いを堪えている。
『分かるぞ、ヴァレンシュタイン。卿が何を思ったか、何を考えたか、よく分かる。わしも同じ想いだ、……まさに終焉、その通りよ!』
ブラウンシュバイク公が哄笑と言って良い笑い声を上げていた。同じ本を読んだ、同じ考えを持った、そして誰よりも相手を理解している……。
『なんとも皮肉な話だ、本当ならあの男がやるはずだった仕事をわしがやっている』
妙な言葉だ。
「……それはどういう意味です?」
チラッと公が私を見た、ブラウンシュバイク公は未だ可笑しそうな表情をしている。
『あの男はリメス男爵の孫なのだ。母親が男爵と平民の女との間に出来た娘だった』
「!」
では、あのリメス男爵の相続事件で死んだ弁護士夫妻はリメス男爵の娘夫婦だったという事か。ヴァレンシュタインはあの事件で両親を失い、その直後に祖父を失った……。
『ある貴族がヴァレンシュタインにリメス男爵家を再興させようとしたのだがな……』
「……再興」
『士官学校を卒業し帝文に合格したヴァレンシュタインはリメス男爵として帝国の政(まつりごと)を担うべき……、その貴族はそう考えたのだ。そうなっていればリメス男爵が改革を行っていただろう。わしなど切り捨てられていたかもしれん……、皮肉であろう?』
「……」
そう言うとブラウンシュバイク公がまた笑い出した、私には黙って見ている事しかできない。
『ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム体制の終焉か……。良いだろう、わしが終わらせてやろう。しかし帝国の終焉にはさせん……』
「ブラウンシュバイク公……」
底響きのするような公の声だった。私ではない、ヴァレンシュタインに言っている……。
『レムシャイド伯』
「はっ」
『明日以降、トリューニヒト委員長、或いはシトレ元帥と連絡を取ってくれぬか。今回の改革の宣言をどう受け取ったか、確認して欲しい』
「承知しました」
おそらくは何らかの反応が有るはずだ、そこを見極める事で相手の本気度が或る程度は見えてくるだろう。
『それとヴァレンシュタインにわしがあの本を読んだと伝えてくれ』
「宜しいのですか」
余り良い事とは思えない、報せればヴァレンシュタインはブラウンシュバイク公を警戒するかもしれな
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