SAO編−白百合の刃−
SAO32-白百合の決意、雪音の勇気
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るが、当時は彼と組んでも会話なんてほとんどないに等しいし、最低限の会話しかしない、目的だけの仲間の関係。そしてそれは一般的にいう仲間とは程遠い関係だった。
割と楽しめたベータテストを終えてから何ヶ月後に、SAOを結弦さんがプレゼントしてくれた。
『結弦さん……これって……』
『今めちゃくちゃプレミアム物だけど、雪音には手伝ってくれたお礼』
『でも、私は……』
『あ、それ売ると多分、高価になるかもしれないわね。わたしのプレゼントだから好きに使っていいわよ』
『……前から思っていましたけど、結弦さんは……』
『うん。思っている通りだよ』
私のことを見透かすように答える。
最初にSAOの手伝いをしてくれと頼んできた時から薄々感づいていた。
結弦さんは、萱場晶彦に加わったSAOの開発に関わっていた一人であった。
ゲームの開発に関わっていた人なら、私に試作をやらせることも、私をベータテストに当選させることも、入手困難のSAOを手に入れることなんて容易いことなんだろう。そして開発に関わっていた結弦さんの身近な存在とSAOとは全くの無関係だった私を協力させたことで、より良い完成度を磨かせたんだろう。
感づいていたことが本物になったとしても、私はSAOを捨てることができなかった。
だって、結弦さんが開発に協力して作ったものを私は簡単に捨てることなんてできなかった。
今に思えば、捨てる選択といのが正解だったなのかもしれない。当時の私には捨てるということが間違いだった。
その結果、ゲームを始めたら結弦さんが関わったSAOが萱場晶彦によってデスゲームへと変貌。条件を満たすまでゲームの世界へ永久に脱出することなど不可能。そして現実世界と同様に死は平等、コンテニューなど存在しない。
そんな世界で私はまた独りになってしまった。
私を救ってくれた結弦さん、結弦さんに与えてもらった居場所へ帰ることができなくなってしまった。
単なる娯楽でしかなかったゲームから、茅場晶彦の言葉で現実に似て異なる世界へ変貌してしまった事実を突きつけられた私は、狂うほど気が動転しそうになった。
その時から、私は昔のような弱くて全てが恐いと思い込んでいた自分に戻りたくない一心で、必死に平然を保とうとした。ただでさえ、現実世界と似て異なったゲームの世界ではいつかタイムリミットが迫っていることを悟ってしまったことと、誰かと協力しなければ現実世界へ帰れないことゲームであることを理解してしまった。
恐くても恐くても誰かがやらなければ現実世界へ帰られない。それは私も誰かに入っている。昔のように部屋の隅っこで時間が経過して行けばいつかは時が解決してくれるのかもしれない。そうしたかった。この世界で死んでしまえば、私は現実世界も死んでしまう。
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