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SAO編−白百合の刃−
SAO32-白百合の決意、雪音の勇気
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のような家族がいないことが恐かった。
 周りのなにもかもが私にとって恐ろしいものだった。幼い頃からずっと見えてしまった世界観は恐怖そのもの。私にしか見えない世界はとても恐ろしくて、恐くて恐くて誰にも打ち明けることなどできなかった。それすら恐怖だと感じてしまった私は、ずっと今までなにもかも恐れ続けて生きていた。
 でもそんなの、私がバカなだけなのよ。難しいことで一生無理だと思い込んでいた私が愚かだった。ただ簡単なことを伝えれば世界観が変わるだけのことを、私は今まで伝えようとしなかった。

『助けて……』
 
 無駄なのかもしれない。届かないかもしれない。そして、その言葉は簡単なことだけど、私にとってはとてもとても難しい言葉。きっとこれからも、私はその簡単な言葉を言うことは難しい。それでも、そのことを伝えるだけで世界は一新できることは理解した。
 なにもかもが恐れてしまっている私にさえ、誰かに助けてほしいと願望を抱いている。
 孤独も恐い。
 独りぼっちは恐い。
 ずっと独りぼっちはもっと恐い。
 結弦さんに抱えていたものを全て吐き出すように告げ、今まで溜めた雫を全て流し出すように人に泣き出した。子供のように、ただ涙を流すことしかしなかった。
 そんな私を結弦さんはもう一度、温かい手で頭を撫で、優しい声で言ってくれた。

『行くところがないなら、わたしのところへ来ない? その居場所は貴女が無理に頑張る必要はないところだからね』

 その時の声。
 その時の手。
 その時の温もり。
 その時の優しさ。
 その時の出会いを。
 私は覚えている。
 結弦さんの一言がなければ、ずっと恐怖の世界から取り残されたままでいただろう。結弦さんに救われても、世界は変わらない。結弦さんも怖いし、見るもの全てが恐怖だと思ってしまう。それでも、少しだけ楽になれた樹がした。結弦さんの言葉で私は救われた。私に声をかけ、私の頭を撫でてくれて、頑張らなくて良いという言葉が、とても嬉しくて心に沁みた。
 私は初めて人に甘えるように結弦さんにしがみつく。そして涙が自分の叫び声で枯れるまで泣き付いた。
 そんな私を結弦さんは優しく包み込むように抱きしめ、付き添ってくれた。
 その後、私はお言葉に甘えることを承諾。改めて施設から出て結弦さんと暮らすことになった。ただ、結弦さんは仕事が忙しかったから、結局一人でいる時間が多いことには変わりなかった。それでも、施設にいた時よりも心地良くて、一人でも恐くなかった。そして施設にいた時と違って、結弦さんは少ない時間の中で私と積極的に声をかけ、他愛のない話を始め、私の手を触れ合ったことがすごく嬉しかったし、安心した。
 結弦さんのおかげで私は今ここにいる。私は結弦さんに助けられ、救われた。そのことに感謝している私
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