暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百六 〜白蓮の決断〜
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 戦が終わり、早一ヶ月が過ぎた。
 私と月のみならず、白蓮と雪蓮も未だ洛陽に留まっている。
 戦後処理が終わらぬというよりも、担うべき者がおらぬ事が原因だ。
 まず、陛下は退位を決意され、杜若(劉協)が新たな皇帝の座についた。
 本来ならば、これも古来からの仕来りに則って式典を執り行う必要があるらしい。
 だが、今の朝廷はほぼ無人状態だった。
 十常侍とそれに与した者らが処分された事もあるが、混乱の最中に洛陽を逃げ出した者も少なくない。

「何故、彼らは戻らぬのじゃ?」

 新たな陛下に、何度溜息混じりで問われたかわからぬ。
 御自ら復帰を促す文を近隣に回したが、効果は芳しくない。
 無論、残っている者や復帰に応じた者が皆無ではないのだが……。

「政務を行うには人手が足りなさすぎますね」
「それに、末端の者ばかりではどうにもなりません」
「予想以上に深刻ね」

 朱里や禀、詠と選りすぐりの軍師らが知恵を絞ってみても妙案が出ぬらしい。

「でもお兄さん。愛里(徐庶)ちゃんからは早めのご帰還をと言ってきてますねー」
「うむ。桜花(士燮)や山吹(糜竺)らが奮闘してはいるが」

 黄巾党と偽勅令の一件で、漢王朝の権威失墜が天下に遍く露呈してしまった。
 新たな陛下がいくら建て直しを図ろうとも、もう諸侯はその指示に従おうとはすまい。
 いや、諸侯だけではない。
 こうして官吏や兵ですら、朝廷を見限ったとばかりの態度を隠そうともしない。
 冀州やエン州に逃げた庶人らもまた然りで、司隷一帯は完全に活気を失っている。
 そして、その事は異民族をも刺激してしまっていた。
 北方では匈奴が侵入し、国境付近を荒らし回っている。
 白蓮が此所に残ったままなのも、それが原因だ。
 本拠地である北平も攻撃を受け、守備を任されていた者は既に冀州へと逃れたらしい。

「自分が情けないよ。帰るところがなくなっちゃうんだからな」

 白蓮が、自嘲気味にそう知らせてきた。
 奪還に向かうのかを尋ねたが、白蓮はただ頭を振るばかり。

「所詮、私は州牧として相応しくないって事だ。例え幽州を奪還したとしても、庶人には受け入れて貰えないさ」
「…………」
「州牧の地位は返上する。幽州は、麗羽に委ねようと思うんだ」

 悩んだ末なのであろう、憔悴しきった様子があった。

「お前がそう言うのならば、私がとやかく言う筋合いはない。だが、これからどうするのだ?」
「……歳三さえ良ければ、今後も同行させて欲しい。いや、お前の指揮で動く事で結構だ」
「紅葉(程普)と菫(韓当)にも相談したのだろうな?」
「ああ。二人とも、私の判断を尊重してくれるらしい。……宜しく頼む、歳三」
「……わかった。そこまで申すのなら受け入れよ
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