第二部
第一章 〜暗雲〜
九十四 〜哀しき別れ〜
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認めての死では致し方あるまい。
「土方。これから、どうなると見る?」
「は。李儒が自害した事により、月の挙兵が濡れ衣である事を証明できる者がいなくなりました。……問題は、十常侍の出方にござろう」
「そうじゃな。陛下は如何されておいでか……」
二人は、溜息を漏らす。
「ともあれ、洛陽に向かうより他ありますまい。恐れながら、殿下の御名を使わせていただく事になりますが」
「その程度、造作もない。責めは私が負う、良きに計らえ」
「はっ!」
もう躊躇している猶予もない。
「誰か!」
「ははっ!」
外で警護に当たっていた兵が、天幕に入ってきて跪く。
「出立だ。彩らに申し伝えよ!」
「はっ、直ちに」
敵軍は月の旗を掲げてはいるが、月が指揮を執る事はまずあり得まい。
何より、詠と閃嘩(華雄)がそれを許す筈もない。
ならば、速やかに打ち破るのみだ。
李カクと郭シがどれ程の才覚を持っているかはわからぬが、我が軍が後れを取る事はまずない。
「歳三殿!」
そこに、疾風が駆け込んできた。
「何事か」
「はっ! 白兎(董旻)が参りました!」
「真か。すぐに連れて参れ」
「……そ、それが……」
口籠もる疾風。
「何か、異変があったのだな?」
「……はい。此方へ」
不吉な物を感じつつ、疾風に従って駈けた。
「白兎!」
「……ち、父上……」
私の姿を認めると、白兎は弱々しく笑みを浮かべた。
地面に寝かされ、その背には黒ずんだ布が巻かれていた。
どうやら、矢傷を受けたままで此所までたどり着いたようだ。
「何があった」
「……はい。何進様の命で、父上に……これを」
そう言って、白兎は懐に手を入れようとする。
が、その腕は震え、思うように動かぬらしい。
「疾風。取ってやれ」
「はい」
「あ、義姉上……。上着の内側に、縫い込んであります……」
「此処だな。わかった」
疾風は白兎に布をかけてやり、それから上着を裂いていく。
「歳三様」
「うむ」
血に染まった紙片を受け取り、中身を改める。
「…………」
「白兎。これだけの深手を負いながら、よくも此所まで……」
「それが、私の命ですから。……でも、こうして父上と義姉上にお会いできて……」
「くっ……」
歯がみをする疾風。
いや、私も同じ想いだ。
「疾風。何進殿は、李カクらの手勢に屋敷を囲まれ、軟禁同然との事だ」
「何と。洛中でそのような無法が罷り通っていると?」
「そのようだ。何者も近づけぬらしい」
「……そうですか。では、月殿の事は?」
「そ、それは直接お話しします……」
白兎が、か細い声で話そうとする。
「無茶を言うな! その傷では」
「い、いえ……。いいんです、一度は死んだ身ですから」
「
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