暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
四十六 風吹けど
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
長閑に流れゆく雲。一際厚い雲が太陽を遮り、地上に影を落としてゆく。

穏やかな天候の下、崖は不穏な空気に包まれていた。緊張感が張り詰めるその場では一人の子どもを多勢の忍びが取り囲んでいる。雲間から漏れる斜光が中心で俯く彼の髪を黄金色に煌めかせた。
「…俺を殺すか」

時折訪れる薄闇。雲が遠ざかるにつれ、白い輝きを取り戻す崖。
白日の下、ナルトがゆっくりと顔を上げた。その顔からは未だ笑みが消えていない。

「それが一番手っ取り早い」
そう言うと、ダンゾウは岩場から腰を上げた。話の全貌が見えないものの、ダンゾウを守る為に部下達がそれぞれ己の武器を構える。

ナルトから受け取った巻物。自らにとって非常に都合の悪いソレをダンゾウは力任せに引き千切った。ぱらぱらと撒き散る粉雪。ダンゾウの手を放れ、崖下へ舞い降りる。崖下へ墜ちた紙吹雪はやがて強風によって遙か彼方へ散っていった。

「無駄だよ。炎が憶えている」
その一連の動作を何の気無しに眺めていたナルトが淡々と指摘する。それにこの術を扱えるのは俺だけだ、と悪びれも無く付け足す彼を、ダンゾウは胡散臭げに見下ろした。

再現してみせろと訴えてくる視線に応え、指先に炎を燈す。青い光がゆらゆらとナルトの顔前で踊った。
今度はダンゾウが寄越した白紙を燃やしてみせる。一瞬で炎に包まれたが、そこにあったのは焦げ跡一つない、しかし証拠物たる書面がやはり記載されていた。

「貴方と大蛇丸の繋がりを証明する書証はいくらでもコピー出来る。それこそ無限にね」

実際この証書が木ノ葉の里中にばら撒かれれば、ダンゾウの信頼は地に墜ちる。火影など夢のまた夢だ。
己を破滅に追い込む証拠。重要機密をこれ見よがしに掲げる子どもをダンゾウは忌々しげに睨み据えた。

殺気立つ彼の前で、悠々と証拠の品を自ら処分してみせるナルト。自分のほうが優位な立場だと仄めかされ、ダンゾウは内心気が気でなかった。持ち前の鉄面皮で平静を装う。しかしながらその眼は怒りと苛立ちで満ちていた。

「ならば貴様の口を封じれば、何の問題も無いという事」
実に的確な判断。そう結論を下したダンゾウが杖を高く振り上げた。同時に色白の少年が素早く筆を走らす。


「傲慢な愚か者よ。その驕りが身を滅ぼす」

カツンっ、と鋭い音が地を鳴らす。瞬間、色白の少年が描いた絵がナルトに襲い掛かった。


喰い殺さんとばかりに牙を剥く狛犬。墨絵であるはずのソレらは唸り声を発し、空を駆る。
その巨体を前にしてナルトは何の反応も示さなかった。臆する色もない。

「確かにその判断は的確だ。だが浅はかでもある」

そしてふてぶてしくも笑った。同時に岩諸ともナルトに突っ込む狛犬。地鳴りが轟いた。


朦々と立ち上る煙。
ダンゾウ始め
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ