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渦巻く滄海 紅き空 【上】
四十六 風吹けど
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『根』は目を凝らして白煙を透かし見た。静寂が辺りを包み込む。


「俺が独りで貴方の前に現れたのは―――」
鈴の鳴るような澄んだ声。寸前と何ら変わらぬ立ち位置でナルトは微笑した。その声音には何処かさびしげな響きがある。
その声を耳にした途端、感情など必要ないと指導されてきた彼ら『根』は皆一斉にある感情を抱いた。


「死なない自信があるからだ」

それは紛れも無い、畏怖であった。
















手応えはあった。それは確かだった。

我愛羅が籠る砂の要塞。一瞬の間があった後、耳を劈かんばかりの絶叫が谺した。

腕を引き抜く。砂城を開通させた手がゆっくりと姿を見せる。だが己が開けた孔から姿を現したのはサスケの手だけではなかった。

追うように飛び出た『何か』。サスケを握り潰さんと迫ったソレは、彼の目と鼻の先で巨大なその身を振り翳した。直感で飛退いたサスケの眼前で地面を砕く。
そのままずるりと砂の球体へ戻る『何か』を、彼は愕然と見送った。
(……なんだ、今のは)


砂の円球から距離を取ったサスケは震える左手を押さえた。まだ雷に馴染んでいないのか、その手は痺れていた。
だがそのような痺れが些細に思われるほど、彼は先ほど目の当たりにした『何か』に動揺していた。

耳障りな呻き声が前方の砂球から聞こえてくる。それは子どもの泣き声とも、はたまた苦痛に悶える人間の啼き声とも違っていた。


サスケは声の正体を見極めようと砂の円球を凝視した。隠れている我愛羅の姿を砂越しに捉えようと写輪眼を廻す。

己が穿った孔。そこから垣間見える内部を遠目で確認する。



刹那、彼は『何か』と目が合った。



微かに香る血臭が我愛羅に手傷を負わせた事を物語っている。指から滴る血は自分のものではない。
だがサスケはこの戦況を有利だとは微塵も思えなかった。ただ胸の内を占めるのは、言い様の無い恐怖。
『何か』は我愛羅ではなかった。人でも無かった。





ソレは何か………別のカタチをしていた。

















「俺は殺せない。たとえ神でもね」
「ほざくな…―――サイ」
「ハッ」

命令に従い、サイと呼ばれた少年が再度筆を手に取る。振り落とされた杖が再び合図を告げた。

「【超獣偽画】!!」

先刻より遙かに大きい二匹の狛犬。左右から襲い掛かる墨の獣が今度は逃さないとばかりに眼を光らせた。ナルトの肩目掛けて牙を剥く。




だが次の瞬間、犬は一瞬で蹴散らされた。





ナルトの周囲を取り巻く水の壁。突然地中から湧き出た泉は墨犬二匹を瞬時に洗い流した。

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