暁 〜小説投稿サイト〜
真似と開閉と世界旅行
Yui-MHCP001〜
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アスナが聞き返すとユリエールは頷く。

「はい、最初から説明します。軍というのは、昔からそんな名前だったわけじゃないんです・・・軍ことALFが今の名前になったのは、かつてのサブリーダーで現在の実質的支配者、キバオウという男が実権を握ってからのことです」

「キバオウ・・・」

「“なんでや”・・・の人だったっけ?」

「?」

キリトと咲の会話の意味がよくわからないが、とにかく続きを聞こう。


「最初はギルドMTDという名前で・・・聞いたこと、ありませんか?」

「えーっと・・・」

「《MMOトゥデイ》の略だ、コウハ」

「あ・・・ああ。確か日本最大のネットゲーム総合情報サイトだっけ。ん・・・確か管理者がそのままギルドを結成して・・・名前が・・・」

「シンカー」

咲がその名を口にすると、ユリエールの顔がわずかに歪んだ。・・・それからユリエールは軍について色々話してくれた。元はただの生きるためのギルドだったのに、シンカーが放任主義なのをいいことに、ある日からキバオウが同調する幹部プレイヤーと共に様々な出来事を起こしていった。名前を変え、狩場を変え、そして徴税を行い出した。だがゲーム攻略をないがしろにしたことでキバオウ派に不満が起き出した。そこでキバオウは十数人近いプレイヤーによる攻略・・・そう、グリームアイズの一件で死んだコーバッツ達のことだ。当然結果は散々なもので、あと少しでキバオウを追放できると思ったのだが・・・

「三日前、キバオウがシンカーさんを騙し、回廊結晶を使って脱出不可能なダンジョンの最深部に取り残してきた・・・」

転移結晶も持っておらず、しかも非武装だ。一応生存しているので、ダンジョン内の安全地帯にはたどり着けたようだ。このままではシンカーが生きていようとギルド内で権利を持つキバオウにいいようにされてしまう。そこでユリエールはシンカーの副官として・・・助けに行くために、俺たちを頼ってきたのだろう。

「お会いしたばかりで厚顔きわまると思いでしょうが、どうか、私と一緒にシンカーを救出に行ってくださいませんか」

ユリエールの瞳には・・・焦りがあった。・・・ほんと、SAOのエフェクトはリアルだな。

「・・・」

だが、アスナもキリトも動けない。当然だ。これ自体が“罠”の可能性だってあるのだから。だが、咲は違った。

「わかりました。わたしの力で良ければ、お貸し致します」

「サキ!?」

アスナがガタッ、と椅子から立ち上がる。

「・・・ユリエールさん、あなたにとってシンカーさんは大切な人ですか?」

「・・・はい。今も、生命の碑にいつシンカーの名前に横線が刻まれるかと思うともうおかしくなりそうで・・・」


瞳を潤ませ、拳を握りしめ
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