第五章 『魔への誘い』
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に、その名があった覚えがネギにはあった。
魔界の帝王が造物主へ味方をする? 完全に想定の範囲外の知らせだ。魔界の帝王が敵に回ったとなれば、それは魔界全体を敵に回したに等しい事だ。
ネギの顔色は見るからに悪くなっていた。こちらの戦力は一騎当千というには強過ぎる強者揃いと言えど、分が悪いのは火を見るより明らかであり、無理もないだろう。
「そう心配するな。こっちもなにかしらの手は打つつもりだ」
そんなネギを見て、意外にもエヴァンジェリンがフォローを入れた。
「おや? あなたがそんな優しい言葉をかけるとは、珍しいこともありますね。やはりなんだかんだで愛弟子が心配なんですか?」
そこへすかさずアルが茶化しに入る。エヴァンジェリンはまともに相手をしないほうが疲れないと判断したのか、突っかかることもなく、動物を払うように手を動かしながら返す。
「あー言ってろ言ってろ。まぁぼーやの経験にはいいだろうが、流石に事が大きくなりすぎたからな。少しくらい手は貸してやる」
いくらネギにとって良い経験になるといっても、もはや事態はそれどころではない。人間界、魔法世界、そして魔界が絡まりあった未曾有の危機だ。エヴァンジェリンも手を貸すことになんら迷いはなかった。
「ネギ先生、状況説明はこんなもんだよ。なんか質問は?」
「質問ですか?」
ネギは何か聞きたそうにしていた。というのも、ネギは気になって仕方がなかった。思い出して仕方がなかった。記憶が途切れる寸前に見た造物主の素顔についてアルや近右衛門に、エヴァンジェリンに聞きたくて仕方がなかった。
“なぜ造物主の顔が父のものだったのか”。
彼らは知っていたのではないのか? 知っていて、自分に黙っていたのか? 今にもその言葉達が堰を切って口から溢れ出てきそうだった。
しかしそれを口にすることは、ネギにははばかられた。それを口にすると、それを言ってしまうと、自分の心に打ち勝ったと思っていたのはただの思い上がりで、自分の道を、灰色の道を歩むと決めた心を否定してしまう気がしたからだ。
「ぼーや、神楽坂明日菜を助けたいのなら今は集中しておけ。それ程に状況は悪いのは分かっているだろう?」
ネギのそんな思いを見透かしていたのか、あるいは彼女なりに気遣ったのか。エヴァンジェリンは一言ネギへ言葉をかけた。ネギは少し頭を垂れて、小さく「はい」と返しただけだ。
エヴァンジェリンを含め何人かは、ネギの拳が小さく震えているのを見逃さなかった。ネギは怒りに震えていた。エヴァンジェリンにではない。自分にだ。
仲間を頼ると約束し、そう決めたはずだ。なのに、自分にもっと力があったら明日菜を助けることができたのではないか? 父の面影を追いかけて自身の道を歩むことすら揺らいでしまって
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