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王道を走れば:幻想にて
第四章、その6の3:一線 ※エロ注意
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奏でられている。また男の喘ぎも、息が詰まったかのようなものであり、一縷の色気すら感じられる。

『あっ・・・・・・はぁ・・・』
(・・・えっ!?うそ、これってっ・・・!?)

 思い至る所があったか、アリッサは嫌悪するように瞳を歪めた。昔日、情操教育の一環として習ったある部分を思い出したのだ。欲求不満の解消としての、自慰行為を。誰かを想って情を燃やしそれを行う事もあるというのは彼女とて知ってはいるが、未だその手の体験を行っていないアリッサにとっては未知の領域であり、ゆえに知りたいと思うよりも及び腰となって嫌悪が沸いてしまうのだ。

(は、早く立ち去らねば・・・こんな汚らわしい行為、聞いてられーーー)
『あっ・・・ああ・・・やばい・・・』
(・・・・・・ケイタク、殿?)

 立去ろうとした足が、ぴたりと止まる。耳を澄ませて聞いてみるに、矢張りそれは慧卓の声であった。人様の厠にて慧卓が自慰をしている。それだけでも驚愕に値する事実であるというのに、扉越しに聞こえる彼の言葉にアリッサは再度驚く。

『・・・はぁ・・・アリッサさんっ・・・』
(・・・け、ケイタク殿が・・・私を想って・・・?)

 思わず燭台を持つ手がぶれて、明かりと影が揺らめいた。思わぬ形で出でた事実に、胸が高鳴って顔が熱くなっていく。寝台を共にする人物が、眠りに就く前に己を想って欲望を慰めている。胸に沸いていた拒否感というのが薄れて、代わりに好奇心にも似た興奮が沸き立つ。人の性欲の対象としてなる事が無かった、少なくともその自覚が無かった彼女にとっては正に予想だにしない出来事である。それも自慰を行っている人物が、先程まで心の中心に居た人物であるというのなら、尚更であった。
 アリッサは思わず頬に手を当てて自慰の声を聞いてしまう。分別のつかぬ行動を彼がしているという認識があるのにも関わらず、冷や水を掛けるような勇気が出て来なかった。鳴りを収めていた胸の熱が再びこみ上げて、掌に熱いものを感じる。

『あっ・・・出そうっ・・・うっ・・・』
「っ!」

 呻き声と共に水音が治まり、静寂が立ち込める。情事が終わったようである。暫くすれば彼が出てくるかもしれない。アリッサは行きと同じようにゆっくりとその場を後にする。階段に登る際も、厠をちらちらと見遣りながら。
 厠の内にてしゅっしゅっと、何かを拭く音が鳴った。続いて聞こえたのは深い溜息である。

「はぁ・・・本当、最低だな、俺」

 慧卓は暗闇の内にて己自身を見詰める。扱いた最中に漏れ出した液体が亀頭にこびり付き、ぬめぬめとして粘着質な触感を指に与える。厠にて用意されていた、本来なら秘所を拭く役割を持つ使い捨ての葉っぱに向けて慧卓は射精をしたのだが、一物は屹立したままである。自慰の後の虚脱感というのも俄かであ
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