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王道を走れば:幻想にて
第四章、その6の2:東のエルフ
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「今度は見えましたよ!あの林の中に数人ですっ!!」
「全くっ、これだから未開の土人共はっ!!」

 平時であればぎょっとするような侮蔑が聞こえるが、慧卓はそれを聞き流してしまう。未だ弓の射程距離なのだろうか、時折空高く響く高調子に背筋がひやりとする。それらは猛烈な速さで疾駆する馬には及ばずも、その足元には鋭く突き刺さっていく。人体に当たれば必ず傷を負う威力であり、明確な殺意を感じるものであった。
 道は緩やかなカーブを描いていき、二頭の馬はそれに従って走っていく。林が緩衝地帯となり、漸く弓の射程から自分達が外れるのが分かった。慧卓としてはこのまま賢人達の村へ行きたい所なのだが、近衛騎士たるアリッサは憤懣たる思いを抱いているのか、馬の足を徐々に遅くしながら、「きっ」と鋭い視線を林に向けた。

「ケイタク殿っ、私について来れるか?」
「え、ええ!大丈夫だと思いますけど」
「そうか。ならば剣を抜け。反撃するとしよう」
「ええっ!?ま、まさか突っ込むんですか!?」
「その通りだっ!やられたままというのは性に合わん!賊共に、醜さに傾倒した報いというのを受けさせてやる!」

 言うなりアリッサは抜刀して、馬首を完全に林の方へと向けてしまう。瞳は爛々と戦意に滾っており、説得の余地など無さそうであった。

「・・・ったくもう、どうにでもしろ!!」

 慧卓も数歩遅れた場所で馬首を返し、半ば自棄な気持ちとなりながら剣を引き抜く。二つの騎馬が呼吸を合わせて疾駆していき、道から外れて森の中へと身を投じた。無法図に屹立する木々を避けつつ、そしてなるべく速さを求めて馬は乱暴に地を駆けていく。鬱蒼とした暗さを掻き分けて慧卓は剣を構える。賊達とそう遠くない所より反撃に転じたためか、一分も満たぬ内に慧卓の眼は、骸となるべき獲物を捉えた。

「おい、あいつら来てっぺっ!!」
「わかっちょるから、急かせねーでくれっ!!」

 非正規兵らしい慌て腐った動作、そして粗野な身形。その数人の賊達は皆、まるで農家の三男坊のような浮ついた顔立ちをしている。彼らは焦燥のままに、雁首揃って弓矢を構えようとしていた。

「居たなっ!!」

 アリッサは反攻の怒りを胸に、慧卓に先行して駆けていく。一気に迫り来る獰猛な騎馬に恐怖したか、賊達は弦を充分に引き絞ろうともせず、勢いのままに弓を射る。最初の一矢と比べれば、蠅の如く煩わしく、落葉の如く緩やかなものである。

「甘いわっ!!」

 絶叫と共に剣を二度、三度と振り抜いて、馬の顔や己に刺さらんとしていた矢を払い除ける。他の弓は慧卓が手を出すまでもなく、当てずっぽうに木に刺さるか、馬に辿り着く前に勢いを失くして落ちていた。第二矢を構えようとしている賊等に、アリッサは遂に接敵して剣を閃かせる。擦違い様
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