暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十四話 終焉
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だったが私とミハマ中佐を驚かせるには十分な言葉だった。

「まあ私にはそのように見えました。しかし勝手に止める事も出来ませんし、簡単に口に出せる事でもない。どうなる事やら……」
ヴァレンシュタインが笑みを浮かべてこちらを見ている。どう答えるか……、それとも無視するか……、相手の本心を探るつもりが何時の間にか探られている。試されている、そんな感じがした。

「ブラウンシュバイク公は気になると言っていたな」
避ける事は許されぬ、下腹に力を入れて答えた。向こうが一歩踏み込んできた以上、こちらもそれに応えて踏み込まなければ勝負にならん。ミハマ中佐が全身に緊張感を漂わせているのが見えた。

「気になる、ですか」
「うむ、晴眼帝、亡命帝の事だが……」
「いずれも過去の事ですね、未来の事ではないし現在の事でもない」
「……今のところはそうだな」

押されている、分が悪い。
「今のところは、ですか……。まあ、トリューニヒト委員長もシトレ元帥も今のところは政府の一委員長、一軍人でしかありません。同盟の最高権力者と言うわけではない……」
「なるほど……」

トリューニヒト、シトレは戦争を止めたがっている。しかし、それを言い出すには地位も時も得ていない、そう言う事か……。帝国側の様子を見ている、そう言う事だな。お互いに手探りで相手を探っている……。
「これ以上は直接お訊きになっては如何です」
「そうだな、その方が良かろう」

ほっと息を吐いた。掌に汗をかいている、思った以上に緊張していたようだ。押されはしたがなんとか踏み止まった、そんなところか……。水を一口飲んだ、ミハマ中佐もホッとした様な表情をしている。……問題は目の前のこの男だな。今度はこの男の考えを聞かなければならん。もう一度下腹に力を入れた。

「これからどうなるかな」
「随分と抽象的ですね」
ヴァレンシュタインが苦笑した。言われてみればその通りだ、こちらも思わず苦笑が出た。
「では、帝国はどうなると思う、卿の考えを教えてくれぬか」

私の言葉にヴァレンシュタインがじっとこちらを見た。負けられないと思い目に力を入れて見返す。ヴァレンシュタインはスッと視線を逸らし水を飲んだ。ホッと息を吐いた時、声が聞こえた。
「ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム体制の終焉……」
「!」

愕然として彼を見ると彼もこちらを見ていた。
「私は反逆者です、ルドルフに対して敬意など払いません」
「……どういう事だ?」
非礼を咎めるべきなのだろう、だがそれ以上に言葉の重みに気圧された。先を聞くべきだと思った。

「彼は一部の有能な人間を貴族とし、帝室の守護と統治の全てを与えました。貴族達はある時期までは軍人、政治家、官僚として彼の期待に応える事が出来た。しかし徐々にですがその
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ