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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十四話 終焉
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が笑い終えると会議室はシンと静まった。この男が極めて危険で手強い相手だという事は分かっている。だが何処か無防備で脆いようにも見える。ギラついた部分が有れば反発できるのかもしれないがそれも無い。野心など欠片も無い男なのだろう、なんとなく放っておいて良いのかという思いにさせる……。帝国に戻らないかと言ったのもその所為かもしれん、困った男だ……。

「帝国本土から連絡が有った、ミューゼル提督を襲った者が出たようだ。だが卿の忠告のおかげで掠り傷一つ負う事無くその男を取り押えることが出来た。卿に礼を言ってくれとの事だ」
「そうですか」
ヴァレンシュタインは余り興味を示さなかったが横に居るミハマ中佐がこちらを見た、訝しげな表情をしている。

私がヴァレンシュタインが地球討伐に向かっているミューゼル中将に警告を発した事を説明すると一瞬だけヴァレンシュタインに視線を向け、その後感心しないと言ったように首を横に振った。多分彼女もヴァレンシュタインがミューゼル中将を恐れている事を知っているのだろう。

ヴァレンシュタインがそれを見て困ったように苦笑を浮かべている。“気に入りませんか”とヴァレンシュタインが問いかけると“ええ、気に入りません”と彼女が答えた。ヴァレンシュタインの苦笑が更に大きくなった……。

「かなりサイオキシン麻薬を投与されていたらしい」
「……」
「厄介な連中よ、一体何処まで手を伸ばしてくるのか……。こうなると安全な所など無きに等しかろう、たとえ新無憂宮の中でもな」

「そうですね、用心をする事です。宗教関係者と言うのは手段を選ばない、どんな卑劣な手段でも神の名前を唱えれば許されると思っている」
その通りだ、サイオキシン麻薬を使って人を操ろうなどと卑劣以外の何ものでもない、まして人を殺させようとは……。そろそろ本題に入るか、一口水を飲んだ。

「卿に訊きたい事が有る」
「……」
「答えたくなければ答えなくとも良い。ただ、嘘は無しという事にしよう。どうかな?」
「その方が助かりますね」
ヴァレンシュタインが苦笑を浮かべて頷いた。

「トリューニヒト国防委員長とシトレ元帥だが、卿は親しいようだがあの二人は何を考えているのかな」
「……」
「我ら帝国人に対し少しも嫌悪感を示さぬ、単純な主戦派とも思えぬが……」
ヴァレンシュタインがまた苦笑を浮かべた。

「答える前に教えてください。それを聞いてどうします」
「……本国に伝える」
「ブラウンシュバイク公が知りたがっていますか?」
「当然だろう。公もリッテンハイム侯もこれからの協力に支障が出る危険は無いか、非常に心配している」
「なるほど……」

少し考え込む様子を見せた。
「戦争を止めたがっているようですね」
「!」
何気ない、他人事のような口調
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