26,良かった
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下している。一秒後にポリゴン片になる、ということはあるまい。
それでも、持ち合わせていた最後のヒールクリスタルを使う。
「……アルゴ?」
頬を、そっと触れる。三本線のフェイスプリントを切り裂いていた傷はもう無い。
アルゴは、ビクリと肩を震わせた。
恐怖に固まる瞳が俺を捉え、ようやくその瞳から涙がこぼれ落ちた。
「生きてるノ?」
「……ああ」
「良かっタ――」
ああ、本当に。抱き起こそうとした所で、次の言葉が聞こえてきた。
「――クロちゃんが無事で本当に良かった」
その声はあの時の声に似て、心底俺の無事を安堵してくれていた。
「――ァァ」
だから、こそ、だからこ、そ。
「ァァァアアアアア」
アルゴから手を放し、両手を見る。
ついてない、ついてないはずなのに――なぜこんなにも両の腕が血に染まって見えるんだ?
地面が揺れた。
近く幾人もの足音が通り過ぎていく。
怒号の中で、揺れているのは俺だと気づいたけど、為す術もなく倒れこんだ。
目の前を幾つもの靴が通りすぎてゆく。代わりに引きづられて下がってくる黒鉄色のプレイヤー。
止まらない、呼吸が苦しい。頭が痛い。
叫ぶ声――アルゴ?キリトの声??
違う、これはあの時の声だ。
慈愛に満ちた死者の声。
ぐにゃりと曲がった世界で、俺は意識を失った。
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