第十章 (1)
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も少し考えている。…そして顔を上げた。
「――誰にでも、じゃない」
一旦落ち込んだ気分に、きらーんと一条の光が差した。
「だ、誰にでもじゃないんだ…」
「和田勉は無理」
一条の光は、所詮一条…。ふっと儚く掻き消えた。
「たまに、考えるの。もし、遠泳でたどり着いた島の影に、溺れた和田勉が倒れていたら…そして、そこには私しかいなかったら…!」
「…君は余計なこと以外考えないのか」
――それは僕も同じか。
いや、心を蝕む分、僕の方がタチが悪い。ただ巻き込まれただけの柚木に、あんなことをさせて、腹立ちまぎれに嫌味まで言って。…胸の中にじんわりと、自己嫌悪が広がった。
「…柚木」
「ん?」
事も無げに振り向く。…いつもそうなんだ。柚木はいつも、何事もなかったように振り向く。僕は今までずっと、自分でも気付かないまま、それに胡坐をかいていた。
「話したいことがあるんだ」
「…ん」
柚木の唇が、ほんの少しほころんだ。
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